泡沫の夢

□02
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高校入試当日ギリギリまで、ヒーローのアシスタント活動を行いっていた為、結果入試の筆記試験は散々な結果に終わった。
合格通知が届いたときは何かの間違いかと思い、問い合わせをしたくらいだ。


季節は春。



桜がひらひらと舞い、雄英高校の新入生を歓迎していた。














02 本能的に仕方がないです












「…ふわ…ねむ…」






新しい制服。
新しい学校。

高校入学の初日は誰もがドキドキワクワクもんだ。
けれども私はそんなハイなテンションになれるわけもなく。
眠い目を擦りながらフラフラと学校までやってきた。
下駄箱に靴を入れようと試みるが、何度も入れ損ねてしまう。
凄く眠い。とても眠い。睡眠欲を頭が欲しがってる。



バンッ!ガンッ!ゴンッ!ボスンッ!



周りからの視線が痛かったが、何とか下駄箱に靴を入れることは出来た。


さて、私は無事に雄英に入学できたのはいいけれど、これから3年間私が"フェンリル"っていうことは隠さなきゃいけない。
これエンデヴァーさんとの約束。
未成年でプロヒーローのアシスタントっていうのは隠しているわけだし、個性に関わってくるからなるべく目立たないように学校生活を送らなければいけないのだ。

だから学校では変装をする。

犬耳を隠すために、犬耳形のニット帽をかぶる。最近こういう帽子増えてるしね。
で、髪の毛は二つの三つ編みにわけて、黒ぶち眼鏡。
銀の髪は元からだから仕方ない。
一応個性は"犬"で通してある。狼の姿に変身するのではなく、犬のような事が出来るだけ、という個性。



「くそ…エンデヴァーのばかやろうなのです…」



ブツブツと朝から文句を垂れる。
なにが「貴様と契約したのは短期間だからだ!」
雄英に合格したことと契約の終了の旨を伝えるのと書類の押印をお願いしに行ったら、
「土日労働、平日は放課後に依頼する」と真顔で言うのだ。
こっちは思わず「は?」と露骨に言ってしまった。
あくまでアシスタントであるから給料は一切入ってこない。ボランティアの中のボランティアだ。
得られるのは救った人の感謝の声のみ。
それに不満を感じたことは無いとは言い切れないが、自分の立場ってモンを弁えてる。さすがに。

一応言っておくがエンデヴァーさんとの契約は2年間のみ。
高校入学したらヒーロー科の勉強に専念しようと決めていた。
雄英受からなくとも、出来る限りのヒーローになれる手段をと考えていた。
将来の夢は昔から変わらないのだから。

それを、あの、燃焼系髭大火災オヤジは知らん顔で「対応しきれない時は授業の有無に関わらず電話する」と言ったのだ。
エンデヴァーさんに手渡そうとした書類を見事に床に滑り落とした。開いた口が塞がらないとはまさにこの事。
引き攣った笑顔で私は「着拒しますね」と告げたがエンデヴァーさんは私にスマホを差し出してきやがった。
なんでもアシスタン専用で主に連絡のみ。連絡先はエンデヴァーさんと事務所のヒーロー達の物。



スマホまで渡されてしまえば、逃げ道などもう無い。




「いつかあの髭消火してやる…!!!」





ギリイィ!!と歯を食いしばって、靴を履き替えれば、声をかけられる。



「フェンリル…」

「え!?」



思わず心臓がドキッとした。
早速個性を見抜かれたか!?なんてドギマギしながら振り返れば、どこかエンデヴァーさんに似ているような男子生徒。
半分白くて半分赤い。髪が。



「…」


見覚えのある、顔。

エンデヴァーさんの息子だ。

脳内で一致した。
同い年の息子がいると。それに雄英に合格したともあの時聞いた。




「フェンリルみたいだなって」

「えっ!?あ、そ、そう!?ふぇ、フェンリルかぁ〜へぇ〜気のせいじゃないですか」

「かもな。悪かったな、声かけて」





本当にただ似てるという理由で声をかけたようだった。
変装…あんまり意味が無かったんだろうか…。
颯爽と立ち去る轟君の背中を見送って、私も自分の教室に急ぐ。

"フェンリル"というアシスタントヒーローの名が通っているというのも考え物かもしれない。





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