青天の霹靂

□Ride.9
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「炙り出さなきゃ、真相は闇のまま…」





荒北さんは少し、視線を逸らした。





「全部見抜かれそうで、怖いです」

「…繊細か。オメーはよォ」




よいしょ、と荒北さんは俺の腕を引っ張って体を起こした。






「じゃあ、俺が怖くなけりゃあ良いんダロ?」

「あっ…えっ、え?」





荒北さんは何を思ったのか、俺の頭を撫でる。
子供をあやすみたいに。
それこそ荒北さんには似合わない行動だ。





「…ははっ」

「何がおかしいんだよ」

「いえ。荒北さんはやっぱり、いい人だなぁって」

「ハァ?俺がコエーんじゃなかったのかよ」

「…。
…本当は気づいていて、でもそれでも、確固たる証拠がないから…曖昧な判断で言ってしまったらそれこそ福富さんに迷惑がかかってしまう。
福富さんのため…なんですよね」

「そんなメンドクセーこと…やるわけねぇだろ」






福富さんの右腕みたいなもの。
荒北さんは福富さんを信用しているし、福富さんもまた、荒北さんを信用している。
だからこそ。だからこそ、だ。





「めんどくさい事でも、頑張っちゃうんですよね」

「?」

「いえいえお気になさらずただの後輩の戯言ですから」





よいしょ、っと起き上がる。
このままの格好でいたら眠ってしまいそうだったから。






「荒北さんに一つ聞きたいことがありました」

「ア?」

「…」











俺はなるべく表情を殺して。
荒北さんに告げた。













「天津の"誰か"を知ってるんですか?」













俺の。
天津の。



俺の―――







「………どういう意味だってンだよ」

「…前に荒北さんは言ってましたよね?
俺が"天津"の人間だからって」

「…」

「それとも、あなた方の先輩にいたんですか」

「…赤の他人だよ。赤の他人!」





荒北さんはフイッと顔を逸らした。
逃げるように。





「お前とは全然似てねぇし、金持ちでもなんでもなかったヨ」

「つまりいたんですね?あなたの先輩に"天津"の人間が!?」

「だから違ェっつってんだろ!」

「…失言でした。
忘れてください」







荒北さんに一喝されて、ようやく我に返った。
何を熱くなる必要があるのか。







「お昼休みももう終わりますし、教室に戻りますね」

「…」





今度こそ、立ち上がる。
荒北さんも何も言うことが無い様だったので、俺は軽く会釈をしてからその場を立ち去った。





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