青天の霹靂

□Ride.9
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午後のお昼休み。
今日は天気もいいから外で昼食。
木漏れ日がなんとも気持ちよくて。
手作りのお弁当を広げながら、そよ風が凪いでいく。


ランチョンマットを広げてフォークを手に取った。





「顔に似合わねェ弁当だな」

「…荒北さん!」




思わず驚いてしまった。
至って表情を崩しているわけではない。
けれどこんなところに荒北さんがいるのもまた変な話で。


隣に座ると、袋からパンを取りだした。






「…女子みたいな弁当だな。それお前が作ったのかヨ」

「いいえ」

「親にでも作ってもらったのか?」

「年上の人に作ってもらいました」

「…?」

「あの、なんでここにいるんですか?」

「…アー」





別に荒北さんとご飯食べるのが嫌なわけじゃない。
ただ普通に一年生としての疑問。
教室で食べればいいのに。





「この前…悪かったヨ」

「?」

「……お前を疑って」





と、俺はここで少しばかり思案する。
この前の休みの日に一緒に出掛けて…
もしかして言いたかったことって、この事だったのだろうか?





「…いえいえ。あそこにいた誰もが俺を疑ってたんですから」

「…そう自負する割には、ケロっとしてるジャナァイ」

「…そう見えますか?」





お弁当の卵焼きを取って口に運ぶ。
俺好みの甘い味が口いっぱいに広がる。





「…」

「あの、荒北さんを責めてるわけじゃないですよ?」





黙る荒北さんに、やや俺は困惑した。





「弱いところがない人なんて、いないですから。
だって俺よくよく考えてみれば先輩方の前で大号泣。
恥ずかしーですわ…情けないですよ」




俺の涙腺、結構脆いみたいです。
ニッと笑って自分の目を指さした。
荒北さんは、横目で俺を見る。





「ま、実力がモノを言う世界ですからねぇ」

「馬鹿ダロ」

「えっ!!?」





物凄い睨まれた。
さすがに笑顔も引き攣って。





「そんな綺麗事並べてお前はいいのか?」

「…」

「表だけつくろってるなって言ってんだヨ!!!」

「ふぎぎぎぎ!!?」





荒北さんは俺の両頬を引っ張る。
冗談ではない。本気の引っ張りだ。
さすがに頬が取れる!って思うくらいで、お弁当を横に避けてから対抗する。





「痛いです!!!」

「それだろ!!?」

「はい?」




涙目になりつつ、頭にクエスチョンマークを浮かべた。





「お前がずっと言ってるのはその言葉だろ」

「…」

「痛いんだろ。ココが」





胸元を荒北さんは指す。
正直今痛いのは荒北さんに引っ張られた頬なんだけど。






「…ごちそうさまでした」





お弁当もそこそこに切り上げて、ランチョンマットをしまう。
立ち上がってお尻について葉っぱを振り払って立ち去ろうと試みる。





「荒北さんすみません、俺お先に失礼します」

「強がってんじゃねぇヨ」

「!」




ぐい、と腕を引かれて視界が反転した。
芝生なだけあって、靴底の滑りもあったせいか、俺はその場に倒れこむ。
さすが荒北さんといったところか。乱暴だなぁ。






「言いたいことあるならハッキリ言え」





目の前には荒北さんの顔。
倒れた俺を覗き込んでいる様子だった。






「……荒北さん」

「ア?」

「怖いです」

「…ハァ!?」

「荒北さんが、とても怖いです」

「…言いたいこと言えっつったのは俺だけどヨ…」

「誰よりも一番敏感だから、怖いです」

「!」

「変化に気づきやすい。俺が取り繕っても今みたいにすぐ気づく。
それに藤本の件。ああやって荒北さんは言っていたけど、そんなことはないはず」






誰よりも"ニオイ"には敏感なんでしょう?




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