青天の霹靂

□Ride.6
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サーヴェロ…新開さんには悪いけど、覚えて…ない…かな…。





オルベアの上にウサ吉のせて、ちらりと新開さんを見れば外を眺めていて。
夕焼けが妙に映えて、ぺらりと次のページをめくった。




描くのは、人物画。




今の、この新開さんを描かないのは、勿体ない気がして。





「おめさん、絵をいつも描くのか?」

「昔、習っていた名残です」

「…謝らないのか?」





構図を描く。





「…同じこと言いますね。
というか、新開さん…部活はどうしたんですか?」

「ちょっと散歩」

「…福富さんも同じこと言ってたんです」





骨格、アタリ、線を増やして。





「寿一が?」

「…俺がやった、ってことで解決したんじゃないんですか?」

「…」





スケッチブックに描く。






「後輩の面倒を見るのは先輩の務めだ」

「…」

「真波から聞いたぜ。
本当は藤本がやったっていうことを」









バキッ









鉛筆が、折れてしまった。
そしてするりと鉛筆が手のひらから落ちる。






こつん、と落ちた音が響いた。






「冗談では…」

「いや、それがな?」





新開さんは鉛筆を拾い上げてくれた。





「寿一が掃除中にお前と会ったときのことを話してくれて、俺も下駄箱でお前の姿を見つけて」






藤本と一緒にいる処を。






「あの目撃者に問い詰めたんだ。
本当は誰がやったのか」






虫のいい話を。
はいそうですか、なんて解決するわけじゃないのに。






「湊、何を我慢する必要があったんだ」





新開さんは鉛筆を拾ってくれて。
俺は、力なく。




「……」

「被害者はおまえだろ?」






思わず口元を抑えた。
これは、俺が解決しなきゃいけない問題なのに。
他の人を巻き込んで、こんな、都合のいい話があるわけないっ…





「真波に感謝しろよ。
裏取りをしたのは、あいつだからな」





―――屋上で、笑った真波君を思い出した。





ぎゅう、と手で顔を抑えて。
あふれ出しそうになる感情を抑えて。







「疑ってごめんな、湊」







俺は、あまりにも、恵まれすぎていて。





こんな幸運めったにないのに。







「う」







止められない。
もう、決壊してしまったのだから。



















「うわああああああああああああああああ!!!!!!!」
























押し殺していた、ぐちゃぐちゃになった感情が、一気にあふれ出した。
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