青天の霹靂
□Ride.6
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「ふじ、もと…!!」
「お前が帰ってこないから教室の掃除担当のやつら帰れないだろ?」
「っ…!」
「それじゃあ、福富さん。失礼します」
そのまま、藤本に腕を引かれて立ち去った。
何も言えぬまま。
俺は弱いのか?
藤本がいると、本当のことを言えないのか?
なんで?
怖いのか?
あいつの立場が俺よりも優位にあることが。
下駄箱に戻ってきたところで、藤本はその足を止めた。
「ダメだよ…何言ってるの?天津。
ネタバレは禁止だよ」
「…」
怖いのか?
こいつが?
俺は、弱いのか?
「次は容赦しないよ」
「…」
弱い、んだな…。
何も出来なくて。
言い返すことすらできなくて。
バカみたい。
「(藤本と…あれは天津?)」
***
藤本は部活へ。
謹慎くらってる俺は教室でスケッチブックを広げていた。
まだ帰宅部の子達とか数人残っていたけど、気にせず続ける。
鋏で鉛筆を削って、スケッチブックに走らせる。
黒と白。
消しゴム使って雰囲気出して。
滑らせて、描いて、出来上がったのは。
「未練タラタラじゃねーか」
くっ、と思わず笑う。
何も考えずに描いていたら出来上がったのは、2台の自転車。
ただの、それだけの自転車。
だけどそれはルックとオルベア。
俺と、真波君の、ロードバイク。
「あとそこにサーヴェロも描いてほしいな」
「っえ!!?」
目の前に一人の先輩が座ってこちらを見ていた。
新開さんだ。
「あとウサ吉も」
目が泳いでしまって、絵を見られてしまった羞恥心と気まずさとで、どうしていいかわからなくなってしまった。
全く、変化に弱いな。
「描いてくれないの?」
首を傾けて微笑む新開さんに、思わずドキッとしたのは言わないでおこう。