青天の霹靂
□Ride.4
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というわけでやってきました。
チキチキ☆1年生レース〜!
真の強者は誰だ!!?
涙あり!!笑い無し!!感動に包まれながら1番先にゴールテープを切るのは誰だ!!!?
「…」
「…」
「…」
「湊君、顔色悪いよ?」
「真波君…いや、周りのラスボスレベル感半端ないんだけど…」
「だいじょーぶだって!湊君は俺についてくるだけでいいから、さ」
「…むぅ」
グローブを嵌める。
真波君だからこそ余裕だが、張り詰めるこの空気。
緊張感。
誰もが負けないという意思を表にむき出しにしている。
それは殺意にも等しく。
一歩間違えたら、ということだってありえる。
何しろ先輩方全員が見ているわけでもないし、対して実力のないものが罠にはまったとしても誰も困りはしないのだから。
「レース、始め!!!」
先輩の合図で、一斉に学校を飛び出した。
コースは単純。
学校を出るとすぐにある国道を走り、箱根山を超えて学校の正門まで戻ってくるコース。
スプリンター、クライマーの卵を見つけるためのコース。
とか言っても割と普通のコースなんじゃないの?とか自分で突っ込んでみる。
さて。
開始早々荒波に呑まれ始める。
「っ…くそ…!」
余裕をかましているようだが、そうでもない。
1年生の数は、多いのだ。
われ先にと前へ出る人が多くて真波君とはぐれてしまった。
ペダルを踏み込む。
加速して、加速して―――
「っ、っれ!!?」
気が付けば、群がる軍勢は周囲にいなくて、代わりに。
「ほら、ダイジョブだっていったでしょ?」
目の前には真波君がいた。
「なん…俺…」
ハッとして後ろを振り向けば、必死に追い上げようとする姿が見れた。
まるで一瞬。
ペダルを一気に踏み込んで、回しただけで―――
あれだけいた生徒を抜いてしまった。
もしかして、真波君としかずっと一緒に走ってなかったから…
真波君は他の生徒より群を抜いてずば抜けてるの…?
「君って…何者なの…?」
「じゃ、ここからは湊君の出番!」
「え!!?」
「差をつけて離したから、ちょっと本気をだしたやつが出てきてもすぐには追いつかれないよ。
俺、山は好きだけど…平坦はふつうなんだ。だから、湊君!」
「!!?」
「今度は湊君が俺を引っ張って!」
「っでも!せっかく真波君が1位なのに、俺が他の人より遅かったら…」
にっこりと、微笑んだ。
その笑顔に俺は、何も言えなくなって。
ただ、もう黙って前を向いた。