青天の霹靂

□Ride.4
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「ねぇ。真波君は福富さんのことどう思う?」




夕方。
今日はいつもより早めに顧問が練習を切り上げた。
福富さんも珍しく今日は全員帰るよう、指示。
勿論福富さんは"帰れ"と言っただけなので、練習を休めと言っているわけではない。
ここの自主練。



真波君の後ろを走りながら、俺は問うた。





「福富さん?」





平坦な道を速度を上げつつ走っていたが、俺の問いかけに答えるように真波君はスピードを緩めてくれた。





「んー…特に何も感じないかな」

「…怖いとか、思わない?」

「別に」




あっけらかんと、答えた。
実に真波君らしい回答だなと思いつつ、苦笑した。





「ただ…福富さんは主将の器に等しい人物だよ」

「…」

「あの人を超える人なんて箱学にいないし、全国に…いないよ。だから、箱学は強いんじゃないのかな」

「そっかぁ…」




真波君の言う、その言葉は福富さん自身が強いのもそうだけど、その福富さんが作ったチームだから強い。



そう、聞こえた。






「名門箱学…」







さてはて、余計に俺がレースで生き残れるか余計に心配になってきた。
そんな俺とは裏腹に真波君は何の心配もないような笑顔で(実際心配などないだろう)言う。





「大丈夫。俺についてくればきっと大丈夫!」

「でも真波君が俺のペースに合わせたら…」

「湊君のペース?何言ってるの?」




きょとん。

お互いが呆けた。






俺のペースじゃないなら。
まさか。






「俺のペースについてきてよ!湊君ならきっとついて来れるって!」

「いやいやいや何言ってるの?俺真波君が本気出したらついていけないし!!」

「大丈夫大丈夫」

「大丈夫って…あ!?」





ぎゅんっ、と真波君は一気に加速する。
置いて行かれまいとあわててペダルを回す。

ところで真波君の本気って…どれだけ早いんだろう。
動画とかでレースを見てみたが、本当に一人一人が速い。
俺が追いつけるわけがないというのがひしひしと伝わってくる。

まさに前途多難だな…。
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