青天の霹靂

□Ride.4
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真波君にこっそり練習教えてもらいながら、ロードバイクに慣れる。


一年生レースは明日。
たかが一週間でどうにかなるほど超人なわけないし。
ベストは尽くせばいいんだ。
福富さんに殺されるわけじゃないんだ。気軽に行こうぜ!
別に明日のレースでビビってるわけじゃない。断じて違う。




「って、兎?」





気合い(という名の自己暗示)を入れていたら、足元に兎がすり寄ってきた。
はて。この学校、兎飼ってたのかな?




「…かわいいな」




しゃがんで、兎の頭を撫でる。




「お前、迷子か?」





兎は気持ち良さそうに目を細めた。




「迷子ならウチくるか?
と言っても寮だけど…隠せばバレないかな…」




うーんと迷った挙句。




「学校でこっそり飼おう!
……もー!ぎゅーってしたくなる!超可愛い何この生き物!!
兎さんは何が好きなのかな?
あ、眠いのかな?…!欠伸!もーかーわーいーいー!
うしゃぎしゃんんん!モフモフ!!!」

「…ヒュウ」













「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…いつからそこに?」

「"可愛いな"辺りから」

「…(絶句)」





殆ど最初からじゃねえか!!!
きっとこの人が自転車競技部の人じゃなかったら大声で叫んでいただろう。
まぁ、細かい事は色々後にして。




「失礼します!!!」





逃走を選択した。




「待てよ!」





まさかの追いかけ!!!?
負けじと加速するも、先輩の方が圧倒的に早く、すぐに捕まってしまった。





「それ」

「え?」

「ウサ吉」




ウサ吉?
と、首をかしげていると先輩は兎を指さした。
もしかして…これは先輩の?





「あっ、ごめんなさい!先輩のだとは知らずに…失礼しました!!」

「いいぜ。気にしなくても。
それよりそんなに兎が好きなのか?」

「…えっと」

「可愛いもんな。俺も好きだぜ」





とにこやかに告げる。
ところでこの先輩3年生の…。




「新開隼人さん、ですよね…?」

「ああ。お前は湊だろ?」

「なぜそれを!?」




たくさん一年生がいる中でよく俺の名前が…
なんて思っていると。





「靖友が珍しく気にかけてたからな」

「…荒北さんが?」

「だってお前"天津"だろ?
俺らはそれが―――」





と、新開さんがいいかけたところで。





「新開」

「寿一!」




福富さんがこちらに来た。
手には袋を持っていた。


袋に書いてあるロゴは見たことある。
ここの購買のパン屋さんのものだ。

そう言えば今は昼休み。
なんで俺が外にいるのかというと、まぁ真波君を探してのこと。
彼、お昼休みになるといつもどこかに行ってしまう。




「こんにちわ、福富さん」





とりあえず会釈。
相変わらずこの人は怖いけど…。




「昼飯を食べ損ねるぞ」




挨拶をスルー。
負けないもん。挨拶無視されても負けないもん!
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