青天の霹靂

□Ride.3
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***





「はいっ」

「…」





翌日。
早朝早起きして寮から出てきて。
真波君に徒歩でコンビニの前まで来て、と言われたので来てみれば。





「これ、は…?」

「俺のお古のロードバイクとヘルメット」

「…ま、まさか貸してくれるのか!?」

「うん」

「でででもロードバイクって結構値段が…」

「いいよ〜俺愛車ルックだし」





ヘラっと言いのけてみせる真波君。
割と大物なのかもしれない。
意外な一面がここ何回かで見られたな…。



で、その俺に貸してくれるロードバイク。


黒がベースで、ところどころに白と青のラインヤロゴが入っていてちょっと可愛い。
車体に描いてある英語は…えーと





「オルベア?」

「そ。オルベアのアクア。安いやつだけど、湊君にはそれがピッタリだと思って!」

「…なぁ、真波君」




ここまでしてくれる真波君にちょっと申し訳なくなって。
…明らかに真新しい感じがした。
まさか、と悟りつつ、言葉を選びながら俺はいう。




「なんでここまでしてくれるんだ?
友達だからって……」

「…あはは。湊君って頭固いよね!」

「…は!?」

「一緒に自転車で友達と走りたいから!
それだけだよ。理由なんてほかに必要?」

「…」




…真波君らしい、というか。
頭が固いとまで言われちゃ、俺も苦笑しざるを得なかった。





「ぷ…はは!!そうだな。考えるのはやめだやめ。
ありがとよ。真波君」

「さ!自転車に乗って!!」

「つってもこれ…ちょっと怖いな…」





ヘルメットを被ってから試しに自転車に跨ると、まずは足が着かないことで不安になる。
真波君曰く、ペダルを思いっきり漕ぐため、だそうだ。
それにブレーキ。変わった形状なので、なかなか慣れない。





「走ってみなきゃわからないよ」

「…おう」





真波君が俺の前を走り出す。
置いてかれても困るので、ペダルを回した。






瞬間。




「っ…!!」





ざぁっ、と風がものすごいスピードで通り過ぎていく。




いつも自転車を漕ぐようにペダルを回しただけなのに、スピードの出方が違う。



疾走感。
この昂揚感。






「キモチイでしょ!!!」

「スッゲー気持ちいい!!!」





真波君がスピードを上げる。
それにつられて、思わず口角が緩む。





「待てよ…!真波君!」

「!」

「楽しいな、自転車って!」

「…ペースあげるよ!ついてこれる!?」

「無理っつってもお前は行くんだろ?」

「もちろん!」





さらに真波君がペースを上げたので、俺もペースを上げた。
正直、しんどい。



胸が脈打って息切れして、喉がもうカラカラで。



初っ端からこんなにぶっ飛ばしてたら倒れるくらいわかってるけど。




どうしても、楽しくて。




無我夢中でついていった。
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