青天の霹靂

□Ride.3
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―――バタン






部室に一歩踏み込んだだけで伝わる、威圧感。
圧倒的な"王者"という風格。


王者―――……


ちらりと職員室で見つけたが、数々のトロフィーや賞状。
全て自転車競技部のモノ。



全国大会優勝の文字。





王者を名乗るのに相応しい、人達。






「遅ェぞ真波!」

「ごめんなさい。荒北さん」

「!」






一年生がずらりと横に並んで、それを品定めするかのように上級生たちが向かい合っていた。
真波君はもう仮入部していたから部員たちとは顔見知りなんだろう。


けど。
けど俺は。





「…っ」





まるで部外者は立ち去れとでも言いたげな、上級生の目。

そうだ―――言わなきゃ。
ここにきた意味を。





「あの、俺は自転車競技部に入りたいんですッ…」

「…経験者か?」

「い、いえっ…」





金髪の、一際眼光の鋭い先輩がいう。
俺が答えると、まるで興味が無くなったかのように視線を外した。
それからもう一度一年生たちを見渡した。




「俺たちはお遊びで部活をやっているわけではない。
練習についていけない者は置いていく。弱音を吐くようなやつもいらない!」






―――怖い。




多分、あの人が。
この部活の主将、なんだろう。




あの人は、苦手だ。
荒北さんとはまた、違う。





「一週間後、1年生だけのレースを行う。
ついて来れないと判断したものは、即刻退部してもらう」

「!!」




ざわ、1年生達に動揺が走る。
ちらりと真波君を見ればぽやーっとしていて危機感なんて感じられない。




入ったのはいいけど。




大丈夫、かな…。






退部したらまた安住先輩が煩そうだし…。





「大丈夫だよ湊君」

「真波君」

「俺が自転車を教えてあげるから」

「っ、サンキュ…!」




ニコッと真波君は微笑んだ。
俺の表情から察してくれたのだろうか。


意外と鋭いかもしれない。
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