上司も苦労します。
□第9話
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「夜鈴様、この書類お願いします」
「…」
「…夜鈴様?」
「あ、悪い」
部下から渡された書類を受け取る。
いけない、ぼーっとしていたみたいだ。
気付いたら薬管の中身が切れている。
薬管を机の上に置く。
新しい薬を懐から出そうとするが、見当たらない。
………そう言えばストックが切れていたのを忘れていた。
暫くうーんと思案した後、白澤の所に取りにいこうと決めた。
***
「白澤」
「夜鈴ちゃん!いらっしゃい!」
「…薬」
「いつものね〜ちょっと待ってて」
白澤が棚に手を伸ばして薬を探す。
「あれっ……こんなのだっけ…?」
「いらんもん寄越すなよ」
「大丈夫だよ〜…多分」
「多分ってなんだ多分って」
「冗談冗談。いつものね」
「毎度」
お金と薬を交換。
何となく口元は寂しいから、薬管だけを咥える。
「その煙管の代わりになってあげようか?」
「死ねクズ。これ煙管じゃないし」
「大丈夫、僕のはそんなに大きくないからさ」
「何の話をしているんだ万年発情神獣が」
ケラケラと笑うから、ふざけてんのか。
そう思ったので一発殴りそうになった。
「お前…そう言えば彼氏持ちの女には手を出さないんだよな?」
「基本はね」
「じゃあ…もう私に手を出せないな」
ビシッ、と白澤が笑顔のまま固まった。
笑いそうになったが、今までの分の仕返しだ。
「…え?」
「つまりそういうことだ」
「うそ!!?夜鈴ちゃん、彼氏出来たの!!!?」
「…まぁ。一応…」
「一応って何!?どういうこと!!?な、なんで!?」
「……じゃ、私は行くから」
「待って!!せめて誰かだけでも!!」
「…それは」
「それは…?」
「………秘密」
「夜鈴ちゃん!!?」
ニッ、と笑って私は地獄に戻った。