上司も苦労します。

□第8話
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拝啓―――
毘沙門天さん



お元気ですか?
私は割と元気です。
現世に来てからと言うものの色々事件が起きました
何、私は心配いりません
ただ心配なのは―――




「私の理性がどこまで保か心配です…」




二人暮し用のアパート。
そこに男女が二人。


そして先日の初恋(?)沙汰
これは色々と狙っているとしかいいようがない。
もしかして毘沙門天さん何か仕組んだのか?
帰った暁には毘沙門天さんをフルボッコにして問い詰めたいと思います。
夜露死苦。

夜鈴より




「夜鈴さん、何を気にしてるんですか?」

「いやっ…昨日の事件が…ねっ…?」




机で毘沙門天さんに対する苦情を書き綴っていると、鬼灯様が顔を覗かせてきた。
反射的に鬼灯様から距離を取る。




「夜鈴さんが思いの外、良い反応をしてくれたので私も思わず…」

「えっ!!!?」

「―――…からかっただけですよ」

「鬼灯様…いい加減、からかうのは止めてくれ」

「…どうしてですか?」

「その、本気でない相手をからかっても私は…
だから、ちゃんとケジメをつけていて欲しい。
こんなのは…白澤とやってることが変わらないと思うが、な」

「もし…」




鬼灯様が私との距離を縮める。




「もし、私が貴女を好きだと言ったら?」




―――呼吸の仕方を忘れてしまったかのように。
どうやって生きていたのかと思うくらい。
私の全てが止まってしまった。


しかしそれはそう感じただけで、私はちゃんと呼吸もしてる。


一瞬が、異様に長く感じた。





「ほ………き…さ、ま…」



ドクン。
胸が大きく波打つ。




「…な、だからからかうのは止めてくれって」

「…」

「……冗談、だろ?」

「夜鈴さん」




鬼灯様の手が、私の髪に触れる。
たったそれだけに異様に反応してしまった。




「っ、」

「髪、縛らないのも素敵ですよ」

「…?」




鬼灯様はスッと私から離れていった。




「…視察もあと少しです。頑張りましょう」

「……あ、あ」




胸にのしかかる異物。
すっきりしないまま―――何事も無く、任務に没頭していた。




ただ、視察が終わっても
胸に残る違和感は正体不明のまま、地獄に帰っていった。







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