上司も苦労します。

□第3話
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天気良好。
体調万全。
仕事確認、
問題無し。




ただ、問題と言えば。




「夜鈴ちゃんにはこっちの着物が似合うね!」

「いいえ!そんなヒラヒラしたものより此方の清楚な着物が似合います!!」

「お、お客様…」




白熱する二人。
困る店員。


…たま〜にこういう客いるよね。
しかも女物コーナーで。
迷惑千万。


仕方無しに、私は声をかける。




「あのなぁ、そもそも私は着物なんて買いに来たんじゃないんだ」

「そうだそうだ!!夜鈴ちゃんは僕と約束したんだぞ!
お前がいるなんて聞いてない!!」

「話噛み合ってねぇよ」

「あなたと夜鈴さんを二人っきりにできるわけないでしょ!!」

「なんだとこの朴念人!」



あ、そういえば新しいボールペン欲しかったっけな。
あれ買おう。



現実逃避して、文房具コーナーに目を移した。
兎のファンシーな文房具もあれば、ちょっとシュールな筆箱が。
墨にも色々あって、今や黒以外の色も出てるんだな。


…もうそれってただの絵の具じゃね?




「…!」




ゆらゆらと頭のてっぺんが揺れ動いてるボールペン。
これって鬼灯様が持ってた金魚草のやつだ。




「…」

「126円になりまーす」




なんだろう…。
この金魚草の目が何か訴えかけてくるような…。
自然とレジまで持っていってしまった。


…あれ?
これって所謂、




「お揃いですね」




ちゃりーん。
お買い上げありがとうございます!と言う声が聞こえて、鬼灯様に袋を渡された。
あれ?




「悪い、お金…」




いつの間にか鬼灯様がお会計を済ませてしまったようだ。
不覚。いくら安物といえど、お金は返さねば。
お金の貸し借りは怖いっていうしな。




「いえ、結構です。私からのプレゼントということで、受け取って下さい」

「プレゼント…?」

「出張お疲れ様でした。元はと言えば、私が行くはずだったのに…
代わりに夜鈴さんが行ってくださって助かりました」

「!」

「それに、そのせいで体調崩されて…不本意でした。
私に言って下されば、否応なしに止めましたよ」

「いや、大したことないから!
ほ、鬼灯様もそんなに心配しなくたって…」




急にそんな事言われれば、心配かけすぎたか。
と不安にもなる。
やっぱり鬼灯様には知らせない方が良かったか。




「無事に帰ってきて、何よりです。
…お帰りなさい。夜鈴さん」

「っ…!!」




ボンッ!!と音を立てて、顔が赤面する。
不意討ち過ぎてびっくりした…。
今相当酷い顔をしてるだろう。
私は慌てながら鬼灯様から視線をそらした。




「夜鈴さん」

「な、なんだ…?」

「今の顔、もう一回お願いします」




と言ってカメラを構える鬼灯様。




「写真を…」

「断るっ!!!」






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