上司も苦労します。

□第2話
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「白澤、久しぶりだな」

「夜鈴ちゃん、いらっしゃい」




今日は白澤の所へ行って漢方薬を一通り買いに来た。
割と良くしてもらってるし、後学にもなる。
薬を揃えたいし、新薬の実験材料の参考にもなる。


けれど。
ただ一つ問題が…。




「夜鈴さんに話し掛けないで下さい」

「いーや!夜鈴ちゃんは僕に会いに来てくれたんだ。
お前なんかに邪魔されてたまるか」




鬼灯様と白澤の仲の悪さと言ったら…。
犬猿の中って感じなのだろうか。
何をどうしても二人が仲良くなることはない。
……永遠に。




「鬼灯様、落ち着いてくれ。先ずは白澤に漢方薬を貰って…」

「夜鈴ちゃんはどこぞの官吏と違って冷静だよね」

「……何ですか。白豚さん」

「白豚って何だよ!!!」




あーあ…こりゃもう駄目だ。
暫らくは収まらない。




「あれっ?白澤様お客様…」

「お?新顔だ」




ひょっこり顔を出したのは、布巾を頭に巻いて、籠一杯に仙桃を抱えた男性。
はて。女好きの白澤が男を雇うなんて………。




「桃太郎さんじゃないですか」

「ちょっと桃タロー君!!こいつなんとかしてよ!」

「…無茶ですよ」




桃太郎?
あぁ、そういえば天国の住人だったな。
……ここに就職したのか。




金棒を振りかざそうとしてる鬼灯様を必死に白澤が阻止しようとしてる。
が、そんな苦労も虚しく金棒は白澤の脳天へ。




「最悪…!!」

「大分すっきりしました。この頃ストレスが貯まってまして」

「僕で発散するなよ!!」




見てて飽きないなぁ…。




「あの、白澤様。鬼灯様の隣にいる方は…」

「あぁ…彼女は夜鈴ちゃん。医者だよ。
それでいて毘沙門天主任補佐官。
しかも鬼人のトップときた。偉いし可愛いし最高だよね」

「へぇ…あ、ってことは八大夜叉大将って言うのは…」

「うん。私だ」




この説明をするのも2回目だ。
まぁ私のことを知ってるのは今だともう古株くらいしか知らないだろう。
ちょっと地獄を留守にしただけで大分新顔が増えたし。




「桃太郎ってことは、猿、雉、犬がお供にいるんじゃないのか?」

「彼らは不喜処地獄で働いています」

「へぇ…会ってみたいな」

「では今から行きましょうか?」

「うん。そうしようか」

「というわけだから早く漢方薬持って来い白豚」

「この野郎…!!」




とか言いつつちゃんと頼まれたことはこなしてくれる。
白澤はしぶしぶと言った様子で薬を持ってきた。




「夜鈴ちゃん、約束忘れないでよ」

「勿論。ありがとう、白澤」




薬を受け取って、地獄に戻っていった。





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