黒の祓魔師

□第5話
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「…サク、来ねぇな…」

「遅いですね…授業が終わってから、昼休みを使ってこっちに来るって言ってたのに…」

「ピコも来てねぇぞ」

「もしかしてメフィスト卿を本当に狩りに…」

「…」

「…」

「ゆ、雪男そんな事言うの止めろよ!!ピコならやりかねない気がする…!!」

「確かに」

「ちょっと俺心配になってきた。サク探しに行って来る」





ガッシャアアアアアアアアン!!!!





「え?」





燐が言ったと同時に、部屋の窓ガラスが割れた。
何かがそこに飛び込んで来て、部屋の中に入ってきたからだ。






「到着…っと」

「サクさん!!?」

「それにピコ!!!」

「あ、窓ガラス割っちゃったねぇ…すまん!」

『外に変なのいたから、それを片付けてたら…吹っ飛ばされた…(あいつ、人間じゃねぇな…)』

「俺は知らないんだけど、ここの寮まで歩いてきたらそこの橋で急にピコが…」

「変なの?もしそれが不審者のようでしたら…学校側にも連絡をしなければいけないのですが」

『ほっとけ。あんなの雑魚だし。俺が払っといたよ』

「一体なんだったんだろうね?」

『お前は知らなくていいよ』

「うわっ!!?ちょ、頭撫でないでよ!!子供じゃないんだから!!」

『俺からすればテメーなんてガキだ。ガキ』





ピコはサクの頭をわしゃわしゃ撫でる。




「そういえばピコも人間じゃねーんだよな?」

『あん?まー…そうだな。俺にも色々あるんだよ』

「…(最近主人公の立場逆転してね?)」




若干焦るサクであった。
その時「ぐううぅ〜」と燐のお腹がなる。
それを聞いてサクは噴出す。





「ごめんごめん。来るの遅くなったから、お腹空いちゃった?」

「おう。腹減ったし…」

「兄さん、学食行ってみる?混んでるかもしれないけど」

「「矧w食あんの!!?」」

『え、お前ら知らなかったの?』

「知らなかった」

「なら早く行きたい!ここの学食ってどんなんだろ!!」

「お、俺も!!!」

『んじゃ、早く行こうぜ雪男』

「ええ。そうですね」





ピコと燐は部屋を出て行く。
残ったサクと雪男。
微妙に出損ねた感がある雪男。






「…あの、サクさん」

「何?」

「この前のあの件…すみませんでした」





サクは笑顔を消したが、すぐに再び口元を歪めた。
普通に、いつものように笑って。





「何のこと?」





その言葉に、雪男は再び聞き返そうとした。
が、その言葉は飲み込まれる。





「…あの…」




サクは微かに動揺する雪男を見て、徐に制服のポケットから何かを取り出す。
握った手のひらをゆっくりと開いた。




「……コールタール?」





その手のひらには、瀕死のコールタールがいた。
弱弱しく、その身体を震わせている。
サクはニッ、と笑って見せると、再び手のひらを握り締め黒い炎を燃え上がらせる。
そんな事をすれば、コールタールはただ死ぬだけだ。





「その炎は…」

「悪魔を殺す能力。故に、悪魔は死ぬ。だけど、俺らは死神…魂を管理する者」





ポゥ…





荒々しい炎が急に、穏やかに燃え始める。
ゆらゆらと。
ゆらゆらと。
命の鼓動がゆっくりと脈打つように。


サクは再び手を開く。




『ギャゥ!!』

「!!?」




コールタールは、まるで魔法にかかったように元気になった。
ぴょんぴょんと跳ねて、先ほどまでの瀕死は嘘のよう。



しかし。





「俺にも…時々分からなくなるんだ」





指をパチン、と鳴らすとコールタールは鈍い音を立てて、ぐしゃりと消えた。





「死神(オレタチ)の存在意義が」





ただ、笑って言うだけだった。
その言葉の意味は分からない。
けれど、雪男は苦笑してその言葉に続けた。





「あなたに存在意義とか必要ありませんよ。ただ、ここにいてくれるという事が大事な事なんです」

「…」

「そんな卑屈にならないで下さいよ。らしくないですよ?」








「……最高だね、アンタ」






呟いた、その声は風の音と共にかき消された。










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