&‐アンド‐

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数日後―――








私が目を覚ましたのは、ポケモンセンターの病室だった。
真っ白に覆われたその部屋は、私も同化してしまいそうで。




ジョーイさん曰く、あの薬の副作用でちょっと身体が異常反応を起したから吐血がどーのこーのうんたらかんたら。
よく分からなかったけど、とにかく大丈夫のようだった。
ただ、数ヶ月間は後遺症が残り、しかしそれも時間をかければ元に戻るだろうと。
身体に力が入らず、しばらくは松葉杖の生活&リハビリになるだろう。



うーん。
リハビリが思うように行かないんだよね。
身体が動かせなくって。もどかしい。







開けられた窓から、さわやかな風が入り込んでくる。
今私の手持ちはトウコたちが代わりに世話をしてくれている。
なんやかんやでレシラムもゲットしていて、その辺は特に問題は無かったみたいだし。
ただあるとすれば…ゾロアが私の傍にいたいって泣き喚いてることかな。



ポケセンの中じゃ騒がしくなるし、治るものも治らなくなるからと。
しばらくは私の手持ちに会えないのです。



退院まで時間はかかるけど、でもトウコ達がたまに皆を連れて遊びに来てくれるから、私自身、寂しくない。





「…」







身体を上半身起した状態で、私はその紙を見つめていた。
ある人が書き残して言った手紙だ。








"リリィ




君がこの手紙を読んでいるならば、僕はもう君の傍にはいない。
約束を…破ってしまったね。ごめんね。
ありがちな台詞だって笑ってるかもしれないけど、これは僕自身が決めたことなんだ。
今まで色々考えた。
リリィに出会うまで僕が考えてきたこととリリィと出会って思ったこと。
まだまだ分かるには遠い時間がかかりそうな気がしてさ。
やっぱりこの数式は解けそうにも無いね。難しいよ、気持ちなんて。
リリィが僕と一緒に旅をするっていってくれたけど、それでは僕はまた君に甘えてしまう。
それじゃあ意味が無いんだ。
僕が変わる為には。
僕が強くなる為には。
次は僕が―――君を守る為に。
だから、ごめん。
僕は行くよ。





さよなら
   リリィ "






それだけの文章を残して、Nはどこかに行ってしまった。
私の傍にはいてくれなかった。
目を覚ましたら、そこには誰もいなかった。
掌にあった温もりは次第に溶けて無くなっていった。
一体どれだけ人を振り回せば満足なんだい?



私はどれだけ…君に、傷つけられなければいけないの?




「っ…」




涙が落ちて、紙をくしゃくしゃにしていく。
文字が歪んで、読めなくなってしまう。
分かっていてもこの涙は止められない。





行ってしまったんだ。
さよならと告げて。




……さよならなんて、言わないでよ…っ





「N…N…っ…行かないでよっ…」





約束したじゃない。
一緒に遊園地行って、アイス食べて…。
まだまだ、君とやること、たくさんあったんだよ?
本当に私は―――。





「…っ」





この後は分からない。




もう、Nに会えないかもしれない…。




ゲームの中では七賢人を探して、Nのその後の情報を僅かだけど掴むことができる。
だけど、ここはもうゲームとは違うんだ。


どうすればいいのか分からない…。


でも……もしかしたら、イッシュを巡ってまだ旅を続ければ再び巡り合うことができるかもしれない。


それが果てしない道のりだったとしても。




新しい発見もあるかもしれないし。





今、こうしてまだ…私がここに存在しているということは、これは終わりであり、始まりなんだと思うよ。






最後に、どうしても、Nに伝えたかったことがあるの。





私はテーブルの上においてあったペンを取り、くしゃくしゃになった手紙の裏に一言書いて、紙飛行機を作った。
そして、願わくば、彼に届くように祈りながら、微笑んでその紙飛行機を外に飛ばした。




ゆらりゆらり、紙飛行機が風に乗って飛んでいく。



ふわりふわり、風と共に届け。










どこかで旅をしている貴方に。








私のココロを。





































(その手紙は)
(後に―――)

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