&‐アンド‐

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「…リリィ?」





遠のいていた意識を呼び戻したのは、Nだった。





「今、なんて、言った?」





視界が再びはっきりしてくると、きょとん、としたNの表情がそこにあった。






「ナチュラル………ハルモニア…グロピウス……」

「…」

「これは…」





これはね。
この名前はね。





「きみの…なまえ…」





微笑を浮かべて、そっとNの頬に手を伸ばした。






それが合図だったかのように、Nの瞳から涙が零れ落ちた。






「あれ…?あれ…?なんで……涙が…」

「N…君は化物なんかじゃないの……」






その涙が、私の頬に落ちる。





「…僕が、間違ってたのかな…ね、リリィ?」

「……一概には言えないけど、ポケモンとトレーナーが一緒にいることがなぜポケモンを苦しめると思うの?
確かに、そういう人もいる。けれど…ほら、見て、N。私のポケモン達は苦しそう?」





Nは静かに首を横に振った。





「でも…」

「トウコも、トウヤも、ベルもチェレンも…ヒサキさんもバル子さんも…誰もポケモンを苦しめていない。
寧ろ苦しめていたのは……」

「…っ」





君の、お父さんだったんだよ。





「リリィ…ごめん。ごめん…ごめん」

「…気付いても遅くない。また、1からやり直せばいいよ…ねぇ、N。私と一緒に旅をしてみない?」

「…旅?」

「そう。そうすれば、Nの知らなかった世界を一緒に―――」





今まで黙っていたことが不思議なくらい。
ようやくと言っていいほどゲーチスは、再び邪魔をする。





「こんな化物が正常にもどるとでも?あほらしい」

「少なくとも―――」







「アンタより、マシだと思うよ」







ゲーチスの後ろに立つ、緋色の姿。
彼女は息も絶え絶えに果物ナイフをゲーチスの首元に突きつけた。





「っ!?生きて…」

「あんたの刺したナイフ、こんなんじゃ人は殺せない。舐めるなよ。今までバル子を縛っていた分の恨みを―――」

「縛っていた?ふざけないでくださいよ。彼女が勝手に寄ってきただけでしょう?」

「黙れ。私はそこの小娘ほど甘くは無い」





ぐ、とヒサキさんの手に力が篭る。
その時、バタバタと大勢の人が駆け込んできた。
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