&‐アンド‐

□22
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***




エルside





「"こちらのお部屋です"」





案内されたのは、小さな部屋だった。
そこには弱っているポケモンが数匹いた。





「"彼らを元気にしてみてせて下さい"」





…?
へんな言い方だな…。
私は別に魔法が使えるわけでもないのに…。





「このこの名前は?」

「"チョロネコでございます"」

「この子は?」

「"エルフーンでございます"」

「こっちは?」

「"ダルマッカでございます"」

「…ああ、そうか」






わたしは、ぱん、と手を叩く。





「この子達、お腹が空いてるんだ。病弱だからって、ご飯あんまり良いのあげてないでしょ?
多分大丈夫だと思うよー…君たちが怖いだけみたいだから」

「"!!!"」

「優しく…普通に接しればいいんだよ。
無駄に気遣うと、取り繕ってるっていうのが分かっちゃう。この子達、普通に愛されたいだけ、だよ」






エルフーンという子を両手で抱きかかえた。
目はおびえてる。

だけどここで怖くないよ、大丈夫、なんて言葉は要らない。



ポケモンは言葉じゃなくて、心でお互いを通じ合わせるんだ。





喋る必要なんかないよ。





「"…N様"」

「僕も驚いたよ…エルは僕みたいに本格的に喋れるわけじゃない…。
言葉の通り、心と心で通じ合ってる…不思議だな……」

「"…"」

「言葉は交わすことでしか、それぞれの気持ちなんて分からない。
態度、仕草なんて結局は上辺の判断。心から理解することなんて…絶対に不可能なのに」

「"エル様はポケモントレーナーであり、今まで多くのポケモンを大事になさっていました。
それにその反対のことも見たことはあるでしょう…リアと接触したそうですし"」

「そうか…」

「"どちらの心も分かるからこそ、エル様の力は発揮できる。
お言葉かと存じますが、N様には理解できない能力かと"」

「バルの言うとうりかもね」

「"肯定なされるのですか?"」

「ああ。僕にだって解けない数式はあるさ。エルは普通じゃない。初めてであった時だって、僕は直感した。
この子は、上に立つ素質があるってね」

「"女王様ですか"」

「そうだね」

「"ふふ…面白いです。これから、彼女がどう変わるのか…どうこの世界に影響をもたらすのか…"」

「バル、エルのことを頼んだよ。ゲーチスのところに行かなきゃ」

「"分かりました"」







エルフーンを抱きかかえて、頭を撫でてやる。
暴れる事無く大人しく膝の上で眠っていた。





ずっと。





もう、目は覚まさない。








「おやすみ…」







エルフーンはもう弱っていた。
暴れないのも、そんな力は無いからだ。
なぜ、こうなってしまったの?


なぜ、こうも弱っていたの?





「"全てはあの愚かなトレーナー達のせいです"」





あのトレーナー?




「"世界にポケモンを使役し、倒れるまで道具の様に使い続ける者達がおります"」

「なにそれ…」

「"エル様、あなたは力を持ったお方です。ならばそのお力を、このポケモン達の為に、救うためにお使いになられてはいかがでしょうか"」

「…力」

「"あなたはもう女王に等しいのです。N様に認められた瞬間、あなたは女王だ。
この頂点に君臨するものとして相応しい"」

「…私が、やらなきゃ」

「"ええ…では手始めにとあるポケモンを見ていただきたいのですが…"」






私が、やらなきゃ。







私が、ポケモンを救わなきゃ。








「その、名前は?」







ポケモンが可哀想だ。






「"かの有名な伝説ポケモン―――名をルギアと申します"」







私がやらなくちゃ。






ポケモンをトレーナーから助けてあげる。







私が正義〈HERO〉だ。








22:歪な救済






(この力を使って)
(助けてあげるから待っててね)

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