日和

□水色の告白
2ページ/3ページ


『そんな気遣い、苦しいです』
『―…気遣いとかじゃ、無いよ』

泣き出しそうな妹子の頬を、そっと太子の手が包む。

『私は、本当に平気なんだ。…まぁ尻は痛いけどな』
『っ…だって、太子、泣いてた…』

頬から伝わる太子の温もりに促される様に、妹子の目から涙が零れ落ちた。

『うん、痛かったからね』
『…辛そう、でした』
『痛いもん、そりゃ辛いに決まってるだろ?』

妹子の頭に手を回し、自分の胸に手繰り寄せる。
しゃっくりを上げ始めた妹子の頭が、呼吸に合わせて震えていた。


『私は妹子が好きなんだ』


直ぐに近くから聞こえたその言葉は、どれだけ待ち望んだものだったか。

『だから、泣かなくていいんだよ。妹子』
『たいし…』

妹子の腕が太子の首へと回される。
その手は酷く怯えた様に震えていて、太子は妹子の頭を撫でて宥めた。

『ごめ…なさい』
『…うん』
『…っ、すき…なんです』
『…うん』

太子の肩口に次第に冷たい雫が拡がってゆく。

昨日無理やりに得たものとは違う、温もりに触れられた気がした。




end

→アトガキ
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ