□危険信号
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その日の曽良君は何だか様子が違うって気付いてたんだ。

…まぁ、分かってた処で、逃げられるわけなかったんだけどさ。
 
 
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危険信号
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温泉地として有名な町の、適当に安価な宿をとった。
汗の所為でべた付く身体を綺麗にしようと、すぐさま浴場へと向かい、着ていた物を脱ぎに掛かる。
まだ早い時間だけあって、他の客は見当たらない。
  
『ふひーっ、今日も疲れたねぇ』
『…』
 
ほら、今日はずっとこの調子。
ぼーっとしてるっていうか、怒ってるっていうか…兎に角今日の曽良君は何処か気が抜けている。
私の方に身体を向けて、心なしか私の胸辺りに視線を落としている。
  
『…曽良くん、無視?』
『あの、』
『ん?何、何?もしや曽良くん具合悪い?』
 
白面なのはいつもの事だけど、気分が優れない様にも見える。
そしてその病人風の弟子は、私に向かって、
  
『抱かせて下さい』
 
と言った。
 
『…』
『…』
『……』
『……』
『………曽良くん、君さ、』
『何ですか』
 
失言です、とか、そういう撤回は……ないみたいだね。
 
『私、男なんだけどなぁ〜?』
 
おどけてみても、曽良君は無反応。ちくしょう。
 
『早く湯を浴びて、綺麗にしてきて下さい』
『え、何ソレ!?何で私が曽良君の為に身体を清めなき…ぐほっ』
 
重い断罪チョップが腹部にクリティカルヒットだよ。して当然の反論だと思うんだけどな…横暴な弟子だ。
 
 
 
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