じゃがー

□屋根裏の住人は見た。
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『ピヨ彦殿さぁー、昨日、ジャガー殿とキスしてたでしょ』

ハマーさんが天井から顔だけを出し、ニヤニヤした憎たらしい表情で僕を見下ろ
して来た。

『…何、覗いてたの?』

他人にラブシーンを見られた恥ずかしさは確かにあったが、ハマーさんにそれに
気付かれぬよう平静を装う。

『の、覗いてた訳じゃねぇYO!ただ、なにしてんのかなーって…』
『…あぁ、そう』

なんら覗きに変わり無い。

『ピ、ピヨ彦殿ってサ、そっちの気があったんだね』
『え?…別に』
『別にじゃないYO!何でそんなに淡白なんだYO!!』

唾が飛んできそうな勢いでハマーさんが突っ込んできた。
首を上げるのも疲れてきて、僕は段々俯き加減になってくる。

『で、ハマーさんは何が言いたいの?』
『あ、…い、いや、そのーどんな感じなのかなーって…』
『え?』

煮え切らないハマーさんに少し苛々しながら僕は指を見ていた。
爪、そろそろ切らなきゃな…

『き、キスした感想だYO!』
『……ハマーさんてもしかして…』
『も、も勿論、拙者はしたことあるけどね!ただちょっと他の人の話も聞いて拙
者のテクニックに磨きをかけようと励んでいる訳なんだよね、女ってのはさあ、
常に新しい刺激を求める生き物なんだよね』

ずらずらと何時までも続きそうな言葉を並べて、ハマーさんは雄弁を振るってい
る。

『……で、ジャガー殿はレモン味だった?それともミント味?』

酸欠になったのか、若干ハァハァしているハマーさん。

『……………』

見上げれば、何かを期待した目が僕を見詰めている。


『………………苺味。』


勿論、嘘だけどね。



end

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