じゃがー

□end of the world
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『あっ、ジャガーさんっ、そこ駄目っ…』
『大丈夫だって、ほら』
『……あ、ホントだ』

小さいテレビに繋がれた黒いゲーム機。

そこから更に延びるコードとそれに繋がるコントローラーを握っているのはジャ
ガーさんだ。

『あれ?そこゾンビいたよね』
『ああ、だからさっき陽動しておびき寄せただろ。ピヨ彦なんにも見てねぇなぁ

『う、怖くて…』

はは、と笑いながらジャガーさんはキャラクターをずんずん進ませていく。

荒んだ世界で、家族も仲間も亡くし、ただ一人闘う主人公。

襲い掛かってくる敵を一縷の迷いもなく撃ち殺していくムービーが流れている間
、僕はぽつりと呟く。

『ジャガーさんなら、闘える?』
『何が?』
『こんな風になった世界で』

僕に視線を向けていたジャガーさんに、顎で画面を示して見せた。

『…ああ。そうだなぁ…』

ジャガーさんは考えているのか、考えていないのか、しばし沈黙した。

画面が、理性を失ってしまった主人公の家族が主人公に襲い掛かってくるシーン
を映し出す。

『ピヨ彦が、こんなんなっちまったら、確実に殺すな』
『えええ!?殺すの!?』

ムービーが終わり、ボス戦へと突入する。
畳に置いていたコントローラーを握り直し、ジャガーさんはまた撃ち始めた。

『殺して、俺も死ぬんじゃない?』

ドン、ドン、と、主人公が撃つたびに重い音が響く。

さっきから聞いていた筈のその音が、やけに近くに聞こえた。

『…まだ、死にたくないよ』

ようやく口から出て来た台詞は、何だかありきたりな、間違った回答に思えた。
ジャガーさんは軽く笑って、確かになぁ、と言った。



僕なら、どうするんだろう。



膝に顔を埋めて、目をつむった。


今、
この時間、
この場所が、
誰にも壊されないことを願いながら。



end

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