じゃがー

□無自覚感情
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夏は、暑い。
だから、きっと何かがおかしくなっちゃたんだ。

―――――


『ピヨ彦、俺さぁ、心臓病みたい』

さっきコンビ二で買ってきたカルピスを、盛大に噴出してしまった。
ゴホゴホと咽ながら、Tシャツの裾で口を拭く。

『な、なに言ってるの?』
『いや、だから、』

心臓おかしいんだ。と深刻そうに顔に影を落としてジャガーさんは言う。
冗談なのか、ホントなのか判らなくなって、僕は首を傾げる。

『おかしいって…今も痛いの?』
『痛い』
『…静かにしてるときも?』
『たまに』
『……走ったりすると、痛い?』
『いや、別に』
『え?』

普通、心臓に負担掛かるときの方が辛いものなんじゃ…
否、でも、そういう病気かもしれないし…

『熱でもあるのかもよ』

僕がジャガーさんの額に手を当て、体温同士の差で熱を測ろうとすると、

『あ、』

不意にジャガーさんは僕を見た。

『今、凄ぇ痛い、ここ』

胸を指さす、ジャガーさん。

………。

『それって、僕のこー…』

言っている途中で、その言葉の重大さを認識した。
熱くなっていく顔を見られたくなかったから、目を逸らすけど。
窓の外では、ミンミンゼミがこれでもかって言う位、鳴いている。

『何だよ、ちゃんと言えよ!僕の子=H俺、ピヨ彦の子供だったのか!?』

…ああ、なるほど。ジャガーさんは夏の熱気に当てられちゃったのか。
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるジャガーさんには悪いけど、このことは、まだ、僕だけの秘密。

(…本人が無自覚なだけなのって、秘密っていうのかな)


end

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