僕は兄貴の肩を二、三回押して兄貴が振り替えると幸せに満ちた顔でこう言った。



「ちょっと兄貴、実験体になってもらうよ」




暫くの沈黙が続き、兄貴はやっと口を開いた。
鈍い、こんなんで僕の実験体になれるのか?



「断r「ありがとう、じゃあ僕の自宮に行こうか」










僕達は宮に着くと兄貴にわざわざ珈琲を出してやり、僕がわざわざ座らせてやった。
自分でこんなことも出来ないかと思うと脳内が沸騰しそうになるが、話の本題はそれじゃない。

この兄貴は珈琲に何杯砂糖を入れたと思う?



「どうした兄弟?」



0杯だ!


そんな砂糖もないただの苦い水を飲めるもんだ。
ただ豆を焦がしたものを水で薄めてるだけで飲めるものなのか。人間はブラック珈琲というが、僕にはただの焦げた水にしか見えない。砂糖をたくさん入れなければ味がしないじゃないか。

本当に頭がおかしいんじゃないのか。




「何でもないよ…。砂糖とミルク取ってくれない?」


兄貴のすぐ近くにある砂糖とミルクを要求すると兄貴が「砂糖は何杯だ?」と聞いてきた。




「その瓶に入ってる分の砂糖半分くらい。」



「…は?」


何をそんなに驚いてるんだ。ただ普通に砂糖の数を言っただけじゃないか。



「ぼけっとしてないで早く入れてよ…」


本当にうすのろ。こんな兄貴は実験体になるのだろうか。



「…こんなに砂糖を入れて具合悪くならないのか兄弟?」

見てるだけで具合が悪くなる、と一言付け加えて。



「何いってるんだい?これが普通だよ。兄貴の方が頭がおかしいんじゃないか?」


負けじと僕も反抗してみる。

兄貴の手には真っ黒な苦い液体。
僕の手にはチョコレート色の甘い液体。



「それじゃあ砂糖味の珈琲じゃないか…」

「そんなんじゃただの真っ黒い苦い液体だ兄貴。」




そしてまた沈黙。






「ああ、そうだ兄貴。」


沈黙に耐えきれなくなった僕は話を切り出した。

僕が本当に話したかった事。








「僕に恋をしてほしいんだ。」




この兄貴ときたら。


だらしなく口を開き、だらしなく手に持っていた珈琲カップを落とした。
兄貴の足元でパリンと音を出し、割れたカップは床を黒い液体で濡らした。
結構そのカップ気に入ってたんだからな、と心の中で囁き、後で兄貴に片付けさせようと考えた。



「何だって?」


「だから僕に恋をしろって言ったんだよカス。何度も言わせるな」


「いやいやいや、何故恋をしなければ行けないのかを聞いているんだぞ兄弟?」


頭の悪いカス兄貴を持って僕は残念だよ。



「破面は他の破面に恋愛感情というものが湧くのか、そして破面には交配をして破面の腹に生命は誕生するのか。破面というのは…」


淡々と説明していく僕をぼーっとアホ面で見て必死に内容を理解しようともがいてる兄貴を見ると無性に腹がたってきた。


「…今はこの二つが題だ。今回兄貴に実験するのは『恋愛感情が湧くのか』だ。兄貴のその単細胞でも解るように言うと、破面は恋をするのか、ということなんだ。」



未だにポカーンと空いてる口に腹が立ち、そこら辺にあった試験管を兄貴の口に突っ込むと僕はこう言った。



「研究に協力してくれるよね、カス?」





素晴らしく爽やかな笑顔だったと思う。















「なあ兄弟。」


それから数十分たった今も僕の研究室に兄貴はいる。その最中僕は藍染様のために一生懸命に実験をしている。


「なんだい?」


「俺は何をすればいいんだ…?蟲なんかいれないだろうし…」


僕は先ほど兄貴の口に突っ込んだ試験管に青色の液体を注ぎながら兄貴と話す。


「そこの兄貴が割った珈琲カップでも集めて綺麗にしたら教えてあげるよ。」


「ハァ…」


なんだその溜め息は。
自分が割ったものを自分で始末するのは当然の行為だろう。しかもお気に入りだったのに…。





ようやく兄貴の掃除が終わり、僕の実験も丁度良く終わった。




「またせたね。本題といこうか。」


兄貴は一言、全くだ…と言うとまた兄貴を僕の向かいに座らせた。今度は珈琲ではなく紅茶に切り替え。


「で、何をすればいいんだ?」


砂糖も何も入れないままティーカップに口をつけ視線を下に落とした。


「簡単な事さ、四六時中僕の側を離れないだけだよ。」



すると兄貴の顔は一瞬強ばる。
でもそんな顔もすぐ難しい顔になってこう言った。



「だが、グリムジョーは「了承はもちろんとってあるよ。従属官を貸して貰うんだ。どんなカスでもそのまま取っていくわけには行かないだろ?」



平然と言ってのけると兄貴はまた深く溜め息をついて自分の主である奴の名前を呟きながら下を見た。



「なんだい、そんなにグリムジョーが恋しいかい?」

正直僕はこの時イライラしていた。僕以外の奴の名前を呼んで視線を下に落とすからだ。


「いや…」



小さな掠れ声。




「あのカス(ロイ)が心配なんだ…」


「は?」

これまた予想外な人物の名前を言うから変な声を出しちゃったじゃないか。



「グリムジョーのところに置いていったら死ぬぞアイツ…ハァ…。」


三度目の溜め息。


「でも確かグリムジョーとあのカスは恋仲じゃなかったかい?」


そう、グリムジョーとロイは恋仲だった。といってもロイがいっつも振り回され毎日のように腰が痛いと嘆いてるようなやつだ。



「俺がいなかったらアイツいつでもどこでもグリムジョーに犯されそうになるんだ、「でも本人が嬉しがってるならいいんじゃない?」


また兄貴が溜め息をつく。1日に何回溜め息をつくつもりなのかと心配になる。












「でもな…」


「何?」



「俺はもう好きな奴はいるぞ?」


「っ」


僕の身体に空いた穴がズキンと痛み出した。
あまりの痛みに顔を歪めるが兄貴には気付かれていない。



「だ、誰なんだい?その破面は…」


震えそうになる声を必死に抑えて訊いた。


そいつの名前を聞いたらそいつを殺してやろうという思いが何故か浮かんだ。何故だ?






「それはな…」



生唾を飲む音が自分でも解る。










「お前だ。ザエルアポロ。」

思いがけない回答に目を見開いた。





「…な、に言ってるんだい?」



僕の眼は何故か涙で溢れかえっていた。


自分でも意味が解らない、嬉し泣きでも悲しい訳でもないのに。








「愛してるのはザエルアポロなんだ。」




泣いてる僕をそっと包み込むように抱き締めてくる兄貴は暖かかった。



「それじゃ、実験に、ならな、い、じゃないかっ…!!」

途切れ途切れに話す僕に兄貴はクスリとわらって頭を撫でながらこう耳元で囁いた。
















「破面には子供が出来るのか、だろ?」




その瞬間全身が燃えるように熱くなったのは兄貴には秘密だ。




こっからオマケ↓




次の日


「昨日は可愛かったな兄弟!!あんなによがって来たのは初めて」


「うるさい!!!!」


「兄貴…もっ…とぉ…!だったか?(ニヤニヤ」


「〜〜〜!!!!兄貴なんかカス以下だ!死んでしまえ!!!!」









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と、まぁ。
あれ、甘くなったのかな。まだレモンかな。
という感じですが…!頑張りました!これからも頑張っていきたいと思います。






2008/12/20

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