HP2
□それから
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ヴォルデモートらの襲撃を受けた日以来、メーデンは授業に出ることも自室に帰ることもしなくなった。
アダムにべっとりと張り付いて離れず、2人に会う人はただ苦笑い。
メーデンだけでなく、彼女を傍に置いておきたがるアダムにも手が負えない状態だ。
そんな2人に一番困り果てているのはアルバスら3人組だった。
メーデンに話しかける機会が全くないのである。
「このままうやむやになるのは嫌だわ」
「・・・うん、そうだね」
「メーデンったら、一言くらいわたしたちに言うことあるんじゃないの?」
「仕方ないよ、アダムから離れないんだもん」
「まさか2人で居るところに話しかけるのは・・・・。
ちょっと、ねえ?」
アルバスとハリスは頷き合い、ローズは不満顔。
「まさかメーデンが片翼だったなんてね」
「ジェームズは知らなかったの?」
そうみたい、とアルバスが答える。
まさかメーデンがヴェルデンモーデだとは誰も想像していなかったに違いない。
彼女はホグワーツいちの落ちこぼれだったのだから。
「意外すぎるよね」
「うーん、でもそういう人だったからね」
ハリスの含みを持たせた言葉に2人は小首を傾げる。
「どういう意味よ」
「僕たちの知っているメーデンはメーデンであってメーデンでなかったってこと」
「もっとわかりやすく!」
「つまり、メーデンは落ちこぼれの地味な生徒のフリをしてたってこと。
だってヴォルデモートの血縁者だよ?バレたら一巻の終わりじゃん」
「確かに」
「そうかもしれないわね」
でも、とローズは続ける。
「わたしはたとえメーデンがヴォルデモートの血縁者だって知っても、メーデンの友達を止めたりしなかったわ」
「そりゃそうだけど」
「だからメーデンはわたしたちにちゃんと言うべきよ」
「何を?」
後から聞こえてきた声に、3人は振り返って身体をビクリと震わせた。
噂をすればなんとやら、メーデンがきょとんとした表情でそこに立っている。
隣には当たり前のごとくアダムが。
「やあ、メーデン」
「ひ、ひさしぶり」
「ごきげんよう、メーデン」
「どうしたの、廊下のど真ん中に突っ立って」
「・・・・えーっと」
3人は冷や汗を浮かべながらヘラリと笑って言葉を探す。
その様子を自分を怖がっていると思ったメーデンは少し首をかしげて笑った。
「心配しなくても、もうホグワーツの中で呪文ぶっ放したりしないわよ」
「そうじゃないの!
そうじゃなくって・・・授業!授業はもう出ないの?」
アルバスもこくこくと頷く。
メーデンは少し眉を上げて答えた。
「授業に出るもなにも、退学になったもの」
「「「うそ!?」」」
「当たり前でしょう?」
不法に人を殺した闇の人間が、ホグワーツに堂々と居座れるわけがない。
魔法省に引き渡されなかっただけでも例外中の例外なのだから。
「行きましょう、アダム」
「もういいのか?」
「ええ」
メーデンはぽかんと口を開けた3人組を置いて、さっさとどこかへ行ってしまった。
押し黙ったその空気は打ち破ったのはハリスだ。
「・・・だから言っただろう?」
どこにも自分たちの知っているメーデンはいないのだと。
今までたくさんの時間を共有してきた落ちこぼれの女の子は、灰色の鳥の片翼として堂々と存在している。
メーデンは押し隠してきたものを、もう隠そうとはしなかった。
溢れる才能も、美貌も、血さえも。
それは皆の知っているメーデンとは全くの別人。
「メーデンは孤独だったのかな」
今までのメーデンが仮面をかぶった別の人物ならば、本当に心許せる人はいたのだろうかとアルバスは思案する。
すぐさま答えたのはハリスだ。
「大丈夫だよ、アダムが居たんだから。
2つで1つ、だから片翼なんだよ。1つじゃ飛べないだろう?
だから灰色の“鳥”って名づけたらしいよ
あの2人は一緒に居てそれが正解だと思うんだ」
「ハリスったら、やけに詳しいわね」
「う、噂だよ噂」
あはは、とハリスは視線を泳がせながら笑った。