HP

□対戦
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ハリーが現場へ駆けつけた時、そこは異様な光景だった。


壁際に立っているメーデンとハリス、そして闇へ落ち灰色の鳥となったアダム。


そこにラミアの姿はなく、代わりにアダムの足もとにボロボロの骨が一体のみ。


「あ・・アダム・・・」


「久しぶりだな、ジェームズ」


久々の親友の対面に、2人は杖を構えることもせずお互いを見た。


不死鳥の騎士団に入ったジェームズ。


灰色の鳥となったアダム。


唯一無二であった親友は、対極な立場で今ここに存在している。


「ジェームズ、何をやってるんだ」


騎士団員に叱咤されたジェームズは我にかえって杖を構えた。


しかしアダムは余裕の表情でその場に立ったまま。


「何しに来たんだ、アダム」


そう低い声で問うジェームズ。


「ラミアがいるという情報が入って見に来ただけだ」


「・・・どうして・・・僕を裏切ったんだ」


「ジェームズ・・・」


「僕たちは親友だったのに、あんなに仲が良かったのに、信じてたのに!」


「俺たちは自分の信じるもののために戦っているだけだ」


ジェームズの期待は裏切っても敵に回ったわけではない。


現にアダムは、ジェームズに危害を加えるつもりは微塵もなかった。


「アダム、もうそれ以上手を汚すのは止めてくれ。
人を殺す正義など、どこにも存在しないんだ」


そう説得するのはハリー。


アダムはハリーに視線を移すと、青い瞳で射抜くように彼を見つめる。


「ならば魔法省も正義ではない。魔法省も、闇払いもだ」


魔法省とて今までにたくさんの命を奪ってきたのだから。


「それは・・・」


ハリーは言葉に詰まり、口を閉ざす。


「結局どこにも正義など存在しない。
自ら正義だと名乗る者は、英雄の顔をしたただの人間に過ぎない」


「アダム、でも君がやっていることは正しいことなのか?」


「さあ、俺たちにもわからない」


混沌と入り混じる正義と悪の中で、一体誰が本当の正義を見いだせると言うのだろう。


少なくともアダムは裏切りたいわけではなかった。


ただ、信じるもののために戦う。


それが闇に足を踏み入れた理由。


「何をしている!!さっさとその男を殺すんだ!!」


そう叫んで廊下を駆けて来たのは魔法省のサム・サラマンダーだった。


アダムは迷うことなく彼に杖を向ける。


「やめろーーーー!!!」


ジェームズの叫び声と緑の閃光が放たれるのは同時。


地面に倒れこんで動かなくなったサム・サラマンダーに、ハリーら騎士団の人間もアダムに向けて杖を振った。


いくつもの呪いが飛び交い、危険を感じたメーデンはハリスの頭を抱えてその場に屈む。


「メーデン、胸当たってるよ!」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう」


アダムの心配はこれっぽっちもない。


今一番不安なのは戦いの巻き添えを食らうかもしれないということだ。


10人以上相手にアダムは杖を何度も振る。


見た限りでは1対10以上で対等な戦いをしている様子だったが、実際アダムは本気で相手に呪いを当てるつもりはない。


ただ軽くあしらわれていることを理解した騎士団員は、焦りから額に冷や汗を浮かべた。


アダムは複数の呪文を防ぎながら口を開く。


「その男を殺した以上、悪いがもう要済みだ」


その男とはサム・サラマンダー、本名はアンソニー・グランダー。


アダムはふっとその場から姿を消し、騎士団員の放った呪いがメーデンとハリスを襲った。


しかし危機一髪、ギリギリ身体に当たらずに済む。


「危なっ!」


「ご、ごめん、ハリス、メーデン。
まさかいきなりアダムが消えるなんて思わなくって・・・」


ハリーは真っ青になって謝る。


そして放心状態で突っ立っているジェームズの方を向いた。


「ジェームズ、しっかりするんだ。
・・・辛いのはわかるけど」


「・・・わかってるよ、父さん。
わかってるけど・・・」


静かに紡がれた言葉を聞いて同情した皆は、ハリーに抱き締められるジェームズを静かに見守った。



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