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□クリスマス・パーティー
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クリスマス・イヴ当日。
部屋でドレスを着たメーデンとアビーはお互いの姿を見てニヤニヤしていた。
アビーはレースを何枚も重ねたAフォルムのドレスで、ヒラヒラがたくさんついているものの黒なのであまり派手じゃない。
一方メーデンのドレスは白に近いピンク色。
身体のラインに沿うように設計されたそれは、メーデンのスタイルそのものを映し出す。
生地はガラスでできたビーズがびっしりと縫い付けられていて、少し動けばキラキラと海岸の砂のように細かく輝く。
「完璧だわ」
髪を適当に結い終わると、軽く化粧を施したメーデンを見てアビーが呟いた。
「そう?」
「今なら世界中の男を落とせるわよ、メーデン」
「それは玉の輿狙わないとね」
冗談にクスクスと笑ってメーデンはハンカチをポケットに入れる。
アビーはもう一度鏡の前で確認すると、時計を見てメーデンに振りかえった。
「メーデンもう時間がないわ」
「えっ、やだ本当。
待ち合わせ時間まで5分もないわ」
「急ぐわよ!」
2人は飛び出すように部屋から出て会場へ走った。
ドレスの裾を持って走る姿は少し滑稽だが、当人たちはそれどころではない。
メーデンはジェームズの姿を見つけると手を振ってパタパタと近寄った。
「ジェームズ!」
「やあ、こんばんはレディたち。
メーデン、そんなに急がなくても僕は逃げないよ」
茶目っ気たっぷりに言うジェームズにメーデンはクスクス笑い、マルフォイとの待ち合わせ場所へ向かうアビーとその場で別れる。
ジェームズはメーデンの手を取ってエスコートすると、身体を頭の上からつま先までまじまじと見た。
「文句のつけどころなく綺麗だけど、ちょっと露出が多すぎないかい?」
「ドレスだもの」
これくらい普通だ。
とメーデンは主張するが、ジェームズは複雑な心境。
会場へ到着すると既に人で溢れかえっていて、まだ時間があるため空いているベンチへメーデンを誘導した。
「ありがとう、ジェームズ」
「どういたしまして、お姫様」
「そう言えば代表の人が最初に踊るのよね」
「そうだよ」
「・・・ということはアダムも踊るのかしら」
「踊るだろうね」
メーデンの目がキラリと一瞬光る。
「アダムのダンスだなんて、さぞかし笑えるでしょうね。
お腹抱えて笑ってやるわ!」
「・・・・メーデン」
怪しく笑うメーデン。
そこへマクゴナガルのソノーラスが響いた。
「みなさん、これよりクリスマス・パーティーを始めます」
メーデンらの場所からはマクゴナガルやダンスホールが見えないので、2人は移動して見やすい場所までやって来る。
マクゴナガルはあの厳格な顔つきに、多少フリルのついたドレスローブを纏っていた。
そのミスマッチがなんとも微笑ましい。
「さて、まずは代表者たちがダンスを披露します。
ミュージック!」
マクゴナガルの合図で脇に居る演奏者たちが楽器を弾き始めた。
すると代表者たちが次々と現れて踊り始める。
アビーはガチガチの表情で緊張しているようだが、マルフォイのリードで上手く誤魔化せていた。
ちがみにアダムのパートナーはと言うと。
「ボーバトン代表のヴァネッサ・ロードラじゃない」
「本当だ。
いつの間に誘ったんだろうね」
ボーバトンの7年生代表。
メーデンは言葉に表しようのない怒りがこみ上げてきた。
あの女はあまり好かない上、仕えている人にベタベタされるのはあまりいい気がしない。
「メーデン、そろそろ僕たちも踊ろう」
慌てて辺りを見回すともう皆踊り始めていて、メーデンはジェームズの差し出した手を取った。