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□悲惨な第一の課題
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第一の課題の前日。
いつものごとく談話室で課題をしているメーデンとアビー。
しかしアビーは緊張で何も手つかずのようだ。
最も彼女は緊張から能力を最大限に発揮するタイプなので、メーデンは全く心配していない。
「ねえ、メーデン。課題の内容って何かしら」
「さあ、魔法使いとしての資質が問われるんでしょうけど」
「筆記とかあるかしら」
「可能性はあるわね」
始まる前から考えてもどうにもならないわよ、とメーデンは苦笑する。
アビーは納得した様子でため息を吐くと、何を思ってかニヤリと笑ってメーデンに顔を近づける。
「もしあたしが優勝したらどうする?」
メーデンは羽ペンを動かす手を止め、うーんと唸りながら天井を見上げた。
「そうねぇ、アビーの欲しがってたフントクリンプ限定20個の鏡を譲ってあげるわ」
「ほんと!?負けられないじゃない!」
真剣に食らいつくアビーに、メーデンはくすくすと笑う。
「それからマダム・パディフットの店でスポンジふわふわ泡ケーキを食べましょ」
「いいわね、それ賛成」
「そしてリータ・スキータを「ぎゃふん」と言わせてやるんでしょ?」
「そうよ!」
アビーは顔を鬼にして勢いよく立ちあがり拳を握る。
「人のこと散々に書きやがってあの女!
いつかけちょんけちょんにして涙と鼻水を垂らしながら土下座して謝るまで絶対許さないんだから!」
「その意気よ、アビー」
メーデンとアビーは顔を見合せてクスクスと笑った。
そして当日。
観戦者たちはまるでクイディッチ競技場のように設けられた観戦席に座っていた。
中央には課題に使うのか9個の個室が用意されてあり、マグルで言う“もにたー”が宙に高々と掲げられている。
アルバスらはメーデンとジェームズの姿を探し始めるが、見つからないままもうすぐ試合開始時刻だ。
「おかしいなぁ、どこにいるんだろう」
「絶対にいるはずよ!」
「だよね」
人ごみをかき分けるようにして探すが、結局見つからず。
試合が始まる時刻になって、ジョンソンがソノーラスを効かせた声で話し始める。
「皆さん、これより三大魔法学校対抗試合を始めます。
まずは審査員を発表しましょう。審査員長はわたくし、ニコール・ジョンソンです」
ぱちぱちと社交辞令程度の拍手が起こった。
「次に、準審査員長のステファン・グルニシビリです。そしてそれぞれ三大魔法学校の校長お三方が審査をいたします。
ホグワーツ校長ミネルバ・マクゴナガル先生、ダームストラング校長アロイス・パンダー先生、ボーバトン校長オリンペ・マクシーム先生です。
審査員の説明については以上となります。
―――それでは、代表選手入場!」
パンパカパーンと魔法で浮かび上がったラップがファンファーレを奏で、自動紙吹雪が選手たちの歩く道を彩る。
派手な入場シーンに口笛を吹き歓声を上げる生徒たち。
ジョンソンは登場していく選手たちを順番に説明した。
「ホグワーツ代表、ボーン・シュート、アダム・クラーク、アビー・ルミナス。
ダームストラング代表、マックス・カエサル、ティモ・ハーバー、ウルフ・アルベルツ。
ボーバトン代表、ヴァネッサ・ロードラ、そソフィ・ヴリトーニ、アンジェリーク・シルツ」
代表選手たちが横一列に揃ったところで、ジョンソンは手をパンパンと叩く。
「ではこれより第一の課題を始めます。一度しか申し上げませんのでよく聞くように」
しん、と会場が水を打ったように静かになった。