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□犯人は
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日曜日。
メーデンはジェームズに連れられて禁じられた森へ遊びに行った。
もちろん箒に乗せてもらったので安全だ。
一通り探索した後はハグリットの小屋で紅茶を飲みながらファンゴと戯れる。
とても楽しかったのだが、さすがに帰って来たときにはクタクタだった。
メーデンは部屋に入ると一目散にベットに飛び込む。
「ふう、疲れたぁ」
「おかえり、メーデン」
どうだった?と尋ねるアビー。
「もちろん楽しかったわよ。
ジェームズったらやっぱり飛ぶのが上手いわ。後ろに乗せてもらったの」
「空中デートなんてやるわね、あの人。
でも本当にいいの?ジェームズで」
メーデンはクスクスと笑って頷く。
「もちろんよ」
「でもメーデンは・・・もっと情熱的というか、真剣な恋をするものだと思ってたわ」
「そう?」
「だって、メーデンは思いつめたらとことんやるまで気が済まないタイプだもの。絶対に恋もひたむきで真っ直ぐだわ。
後で本気の恋をした時に後悔しない?」
メーデンは恋をしたことがない。
だから恋をしたらどうなるか、あまり想像がつかない。
そもそも恋をしても結ばれるべきではないとメーデンは考えている。
ヴォルデモートの血を自分の代で終わらせるつもりだったからだ。
「しないわよ。
そういうアビーはマルフォイに全くアタックしてないじゃない」
クイディッチの選手に選ばれてからせっかく親しくなったのに、アビーもマルフォイもそれらしいアクションを起こしている様子はなかった。
アビーは無表情のまま首を振る。
「いいの、あたし今の関係で満足してるから」
「満足って顔してないけど?」
そうメーデンが首を傾げてアビーの顔を覗き込んだとき、バサバサという羽音とともに黒フクロウが部屋へ入って来た。
アビーのペットのエリザベスはポイッとそっ気なく手紙をアビーに渡すとさっさと飛び立って行ってしまう。
メーデンとアビーは苦笑。
「相変わらず淡泊な性格してるわよね、アビーのエリザベスったら」
「ほんと、誰に似たのかしら」
そう冗談めかしく言いながら手紙の封を開けると、アビーはその表情を凍らせた。
「どうしたの?誰から?」
「あ、ううん、両親からよ」
「そう?」
「うん」
メーデンはアビーの固い笑顔にも気づかないフリをして、夕食までお昼寝を決め込みシーツを被った。
次の日の午後のことだ。
気分が悪いので昼食はいらないと言ったアビーを寮まで送り、メーデンは一人大広間で昼食を食べていた。
最初は割と静かだったのだが、突然グリフィンドールのテーブルがガヤガヤとうるさくなる。
ジェームズのいたずらか何かだろうと思っていたが、あんまりいい雰囲気ではないようだ。
そしてパタパタと駆けてきたジェームズに手を掴まれてメーデンも一緒に走り出す。
「メーデンも、おいで」
「何事?」
「行けばわかるよ」
怖いくらいにジェームズの表情は真剣だった。
アルバスやハリスも真っ青な顔をして走っている。
メーデンはこれ以上聞くことはしないで黙って彼らの後をついて行った。
向かうのはおそらく医務室か。
「さあさあ、こちらですよ」
出迎えられたマダム・ポンフリーに案内されたのは奥から2番目のベット。
中に居たのは―――
「リリー・・・・」
そう呟いたのはアルバス。
ベットに石になって横たえられていたのはジェームズとアルバスの妹、リリー・ポッターその人であった。
「ピーブスもやられたらしい」
さらに隣のベットにはピーブスがあんぐりと口を開けたまま固まっている。
ローズにミミック、そして第3の被害者はリリー。
唐突に閃いたメーデンは口を開く。
「・・・・そうだ、ハリー・ポッターなんだわ」
「どうしたんだい?メーデン。
僕の父さんって?」
「ジェームズ、アルバス、ハリス、犯人の目的はハリー・ポッターなのよ。
ローズはハリー・ポッターの義姪、リリーは娘」
アルバスはぽかんとした表情で言った。
「そうか、ミミックのとき僕たちは待ち合わせをしていた。狙われていたのは僕だったんだ」
ジェームズはパチンと指を鳴らす。
「冴えてるじゃないかメーデン。
ただ問題が一つ、僕の父さんは闇払いなんだ。敵はうじゃうじゃいるよ」
「それもそうね・・・」
なんとなく犯人の目的は見えてきたが、犯人を特定するのは難しすぎる。
そこでハリスが口を挟んだ。
「でもハリー・ポッターの関係者が襲われているならこれ以上の被害を防ぐことができるよ。
後はローズの弟のヒューゴと、ジェームズ、アルバスくらいだ」
「いや、まだいるよ。
レイブンクローのビクトワールと、フレッド・ロクサーヌ兄妹も父さんの義甥姪にあたるんだ」
大所帯だね、とハリスは眉間にしわを寄せた。