我が侭なウサギからのキス
おめでとう、そう囁かれ重ねた唇は何時も通りの苦さで内心あきれてしまう。こいつはまだ煙草を止められないで居るのか。まあ止める気もないのだろうが。
「苦い」
そう訴えかければはいはい、ごめんなさいね。とか軽い返事、明らかな子ども扱いに腹をたてる。
「煙草貸せさ」
一応聞いてみるが貸してくれる訳がないので自ら奪い取る。ティキに何か言われたがそんなことはどうでもいいのだ。
一本を箱から出してマッチで火をつける。ああ、相変わらず不味いな。息を吸うと思わず咽てしまった。
「馬鹿だね、慣れてないくせに」
にやにやと笑う男が本当に腹立たしい。だいたい何でこいつは教団に堂々と入ってきてるのだ!
流石に吸える気がしないので少ししか減っていない煙草を消し(勿体無さそうに見つめていたが)ポケットに入っていた飴を口直しになめる。
「あんたさ、こうファーストキスはレモン味ーとか苺ーみたいなことは考え無い訳?」
「え?なに今のはじめてだった?」
こいつはアホか、いや今更だけれど…。オレと何回キスしたと思ってんだよ。
「違うけど、あんたとキスするといつも苦いさ。後味最悪」
思い出しただけでも顔が歪んでくる。
じゃあさ、とか言いながら耳にキスされる。相変わらずの性格の悪さだ。
「しょうがねぇな、」
今日だけは許してあげる、オレンジ味のキスを君に捧げようじゃないか。
甘酸っぱい味にまざってほんのり苦さを感じ、オレはまた顔をしかめた。