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□Silent Blue
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仕込みも終わった。
ふうっと煙を吐き出す。青空が眩しい。
うーんと伸びをして。まわりを見渡す。
「ん。いねぇな、まりものやつ。なんだよ、ヒマになったから遊んでやろーと思ったのに。」
いつもならそこらへんに居眠りしている姿があるのに。
ぶらぶらと船尾に向かって歩く。みかんの木の間にも緑の髪は見えない。

「ウソップー。ゾロ、見なかったか?」
何やら店を広げて作業中のウソップに聞いてみる。
「ん、ゾロかー? さっき、上に行ったぞー。そーいや、フランキーも一緒だったなぁ。」
「フランキーと?」
「ああ。なんかめずらしーよなぁ。」
そう答えると、ウソップはまた作業に熱中し始めた。

確かに、ちょいと珍しい取り合わせかも。フランキーがゾロと?
そう思いながら展望台へと登る。出入り口の羽根戸に手をかけた時。声が聞こえた。

「これで、ど、うだ…?」
フランキーの声だ。なにやらとぎれとぎれで掠れている。
思わず、手が止まる。んでもって耳がダンボだ。

「ん、ち、ちょっと…、き、つい…」
答えるのはゾロの声。

えーっ!! な、何、してんの?! 
頭の中は一気に沸騰。思わず梯子から落ちそうになる。

「あ、ん、そんな、感じ… いいぞ…」
更に聞こえたゾロの声。

うっぎゃーーーっ!!!
声にならない叫びと共に、戸を突き破る勢いで展望台に転げこむ。
「て、て、てめーっ!!! な、な、何して…っ!?」

「あ? どーした、にーちゃん?」
「なんだよ、ぐるまゆ。」
目に飛び込んだのは、ゾロを後ろから抱いているフランキー…!!!

ではなく。
ゾロの後ろでなにやら重りを調節しているフランキー。
「ちょっと待ってなー、今、終わるからよ。 …このくらいでいいかー、ゾロ?」
「お、うん、このくらいがいい感じだ。」
ゾロのトレーニングマシンの調節中だったのか…

ベンチ型のマシンに座り、ゾロがぐぐっとひもを引く。重りが持ち上がる。
「よーし。これでおっけーだな。」
「おう。わりぃな、フランキー。」
「なーに、これくらい朝飯前だぜぇ。なんかあったら、どんどん言ってくれよー。」
「助かったぜ―。いくらトレーニングでもあんまし重すぎるんじゃ、肩壊しちまう。さんきゅー。」

「おー、じゃましたなー。じゃあ俺は下へ行くぜー。」
ぽんっと肩を叩くと、フランキーは降りて行った。

「何か、用かよ?」
眉間にしわで、ゾロが睨む。
言いかけて、やめた。口を開いたら、何を言い出すか、自分でもちょっと自信がない。
黙ってゾロに近付き、ぎゅっと抱き締める。
「おい、てめー。うぜーよ…」
汗のにおい。もっと抱き締める腕に力を込める。
「おい… どーしたんだよ?」

このばかやろー。くそまりも。
そんな言葉は胸の中にしまった。
どれだけコイツを好きなのか、どれだけコイツが愛しいのか…
こんなことで気付かされる。
…ったく、この、くそまりも、めっ。



→→→→→おしまい
 

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