□空が赤かろうが青かろうが
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ピロリロリン、携帯を買い替えてから一度も変えていない着信音1だとか2だとかそんな感じの機械的な音が私以外誰もいないこの部屋に響いた。

「もしもし、」
「遅いでさァ、電話するからすぐに出ろって言ったろィ」
「知らないよ、じゃあこんな真夜中に電話してくるな」
「は?朝の8時だろィ。いったいいつまで寝てるんでさァ」
「時差を考えて電話してこい、時差を!」

バカじゃないの、と言いかけて、止めた。そんなこと言ったら『俺より成績悪いだろィ』とか『俺をバカって言ったら自分をバカと認めることになるぜィ』とか、とりあえず私をさげすむようなドS発言しかしないからなのだ。小さい頃は全然こんなんじゃなかったのにな、もっと、もっともっと優しかったのに、

「元気、ですかィ?」

ちくり、細くて鋭くて深い痛みがした。胸の、小さな小さな痛み。総悟は剣道の腕を見込まれてアメリカに渡ったのだ。今からちょうど1年前、私たちがまだ高校2年生になりたての頃だ。総悟からアメリカに行くって聞いたときは本当にびっくりしたよなぁ、そして大泣き。私はまだまだ子供だった。

「ふふふ」
「何笑ってるんでさァ、気持ち悪ィ」
「女の子に言う言葉じゃないよ」

窓の外が少し明るくなってきた。夜が明けるのだ。細い光が少し開いたカーテンの隙間から入ってきて、眩しい。

「こっちはもう朝になるよ」
「そうかィ」
「うん」
「今日学校は」
「あるよ、「好き、」…え、」

一瞬で自分の顔が赤くなるのが分かった。なんで、え、このタイミング?てゆーか私顔ぜーったい赤いよね。あー、電話越しでよかったー。じゃなくて!私たちは幼なじみであって、全然そんなんじゃなくて、なんで?なんで、私?

「生まれて初めての告白された相手が俺でよかったな」
「、は」
「今頃どうせアホな面してるんだろィ。少しは喜びなせェ」
「お前、金髪碧眼姉ちゃん落としてくるって言ったろ、」
「いつの話でさァ」
「つい1年前ですけど」

私に向かって酷いことを言っていても、電話の向こうにいる総悟もきっと顔が赤くなってるだろうな。なんて想像すると自然に頬が緩んだ。



空がかろうがかろうが





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