心の在処
□緑青の忍
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「アンタがなに考えてんのかは知らねぇけどさ」
ここから先へは進ませない、
橙色の髪を持つ男は
前半は飄々と、後半は冷やかに言って久秀の前に立ちはだかった。
緑青で付けられた顔料が、男の着ている迷彩の装束によく似合う。
大型の手裏剣を地面に向かって投げると、鎖で繋がれたそれは、クルクルと回転しながら男の手に収まった。
一見して、忍と判る風貌であった。
「ふむ、忍か。卿は優秀なのかね」
突如現れた男を、久秀は見定めるように見た。
(大した力量ではないな)
己の力量を測りきれず、相手に挑むなど未熟者のすることである。
忍は武士ではない。対峙した相手と正面きって戦う必要などないのである。
自身より強い相手と遭遇した時など、尚更である。
(ただの小者か、あるいは、)
久秀は一つの可能性を思い当たり、ふ、と苦笑する。
いずれにしても、刃を交えて見れば分かることだ。