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□飛びたい
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ガンダムマイスター達が地上に降りてから3日が経った。
そしてアレルヤとティエリアは大分、地上の暮らしに慣れてきた…
と言いたいところだったが、どうもティエリアはまだ地上には慣れないらしい。

「…ティエリア、大丈夫?」

ベッドにそれはもうテーブルに落としたスライムのようにぐったりと寝ているティエリアの横に座りアレルヤは訊く。
返ってきたのはだるそうな声だった。

「…いや。重力にやられているだけだ…」

重力に苦痛を感じているようで、声まで重たげだ。

(元々ティエリアは運動をしないから、体力がないんだろうな。現にこうして僕はしばらく経てば慣れてくるんだし。)

そう思ったアレルヤは思い付いた事を言葉にしてみる。

「ティエリア、重力に慣れるために散策がてら散歩しない?」

「………?」

また何を言い出すのかとティエリアは重力に逆らい枕に埋めていた頭を持ち上げ、耳を傾ける。

「ほら、この辺初めて来たし。何が有るのか見たくない?」

そうやって笑うアレルヤは紛争根絶の為に闘う戦士には誰もが見えないだろう。
そんな事をティエリアは圧力に耐えながら心の隙間で考えていた。

「そうだな。君を見ている限りだと、体力が有れば大丈夫なのかもしれない」

ティエリアはそう呟いてアレルヤの手を取る。
それに気付いたアレルヤは手をしっかりと握り、ブンブンと振った後手を離し立ち上がった。

「じゃあティエリアはそこに居て。僕が着替えを取りに行くから」




…そうして身支度を済ませ、散歩にでた。

外は夕焼け色に包まれていた。
住宅街から少し離れているせいか、回りに家がない。
それに、やけに風が強い。

少し寒いな、とティエリアが思ったら手に熱が籠る。
アレルヤが手をぎゅっと繋いできたのだ。
びっくりして手を離そうとすると、握られてる手の力が強くなった。それがなんとなく嬉しくてそれに応えるように握り返した。



そして、丘の上ににあった公園を見つけてそこにあったブランコに二人は乗った。
ブランコをキー、コーと揺らす度に金属音がなる。

「どう、ティエリア。慣れてきた?」

「まだ身体は重いが、初日程ではない」

「そっか。それは良かった。」

その後は他愛のない話をして、少し暗くなってきたから帰る事にした。
帰りは先程来た道とは違う道にした。勿論アレルヤの提案だ。
途中には下り坂があった。
本当に何も無く、坂が続いているだけだった。
冷たい風が坂を駆け登ってきている。

長い長い道の先を見ていると隣の影が前方に走って行った。そのままジャンプをして戻ってくる。
その意味の判らない一連の動きをした彼はティエリアの手を引いて走り出した。
ティエリアはアレルヤの速さがとても速く感じ、足が縺れそうになるがぐっと堪えてしっかりと走る。

「あははははっ、ジャンプするよっ?」

せ〜のでジャンプしてフワッと浮遊感に包まれて着地する。
一瞬、ほんの一瞬だったが無重力感を体感できた。
勢いにつられて二、三歩歩くとそのまま真っ直ぐ帰路に着く。

しかしティエリアは先ほどの行為の意味が見出だせなかった。
歩いている途中、アレルヤに訊いてみた。


「アレルヤ・ハプティズム、先程の行動に意味はあったのか?」

「いや、特に何もないけど…。」

繋いだ手に優しい力が籠る。

「少しだけ無重力〜、なんちゃって」

困ったように彼は笑った。
それを見たティエリアが小さく溜め息をついた。

「まぁ、君にしては考えたな。…ありがとう」

と言って目を反らす。
きっと向こうの表情は照れているに違いない。
二人の影はもう無くなり、空は月夜のカーテンを纏っている。
風に煽られる事もなく、しっかりと。
そのまま二人は手を繋ぎ、月に向かって歩いていた。


†風の強い日
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