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□温かなキモチ
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ティエリアはエンゲージリングを付けたまま、突進するかのような勢いで廊下を歩いていた。
だが、アレルヤの手によってはめられた指輪の意味をティエリアは知らない。
指にキスをされたという事実に混乱しているのだ。

(なぜ、俺なんかに…。ましてや、恋人ではないのに…)

ズンズン進んでいると横から声をかけられた。
「あら、ティエリア。そんなに急いでどうしたの?」

スメラギだった。
ティエリアは立ち止まり、振り返る。
スメラギが距離を詰めると指輪に気が付いたようだ。

「あっ、どうしたの?そのエンゲージリング」

スメラギが指を指すとティエリアも指輪を見て、聞いたこともない名称を復唱する。

「エンゲージ…?」

「エンゲージリング。知らないの?左手の薬指にはめて永遠の愛を約束する指輪の事よ。…でも、あなたにそんな人が居たとは以外だったわ」

ニコニコして説明するスメラギに対し、ティエリアは頬を赤く染めていく。

―― 嬉しい。

そんな感情がティエリアの胸の内を満たしていく。

「…それで誰がそのリングをくれたの?」

スメラギはあいてが気になるご様子である。
そんな問いに素直に答える。

「アレルヤ・ハプティズム…」

恥ずかしいのか若干声が小さいが。

「ですが、俺たちはそんな関係では…!」

反論しようとしたティエリアにスメラギは肩に手を置いて、真剣な面持ちでティエリアを見据えた。

「でもティエリア、あなたは彼をどう思っているのかしら。それを考えてから今、言おうとしたことを言いなさい」

それだけ言ってティエリアが行こうとした方向に歩いていった。

「俺は、彼を…」

しばらくその場に立ったまま、思考の迷宮をさ迷っていた。



…そしてこのまま15分ほど、時が経った。
そして何を思ったか、気が付けばアレルヤの部屋へ駆け出した。

――俺は、彼の事を…!



ティエリアはアレルヤの部屋の前へきた。

「アレルヤ・ハプティズム…」

小声で呼んでみたら、すぐにドアが開いた。
「ティエリア…。おいで」

微笑みながらそう言うとアレルヤは手を引き、ティエリアを自室のベッドに座らせてその隣に座った。

「…で、どうしたの?」

アレルヤが顔を覗き込むとティエリアは躊躇いがちに口を開く。

「このはめる指輪の意味をミス・スメラギから聞いた…」

「うん…」

「永遠の愛を約束するものだと…」

ティエリアは右手の指で指輪に触れる。

「…うん。」

アレルヤはそれを見ながら相槌をうつ。

「それはアレルヤ・ハプティズム、君が…俺を愛しているという事になる」

アレルヤは両手でティエリアの両手をすくい取り、指を絡めるように手を握る。

「うん…、好き。違うな…、愛してる…。ティエリアは僕のこと、好き?」

そう言ってティエリアを見つめる。

「嫌いでは、ない…。」

アレルヤと目が合うとすぐに逸らそうとするが、逸らせない。

「じゃあ、こうやって手を握るの嫌?」

アレルヤが手を握る力を少しだけ強めると、ぎゅっとティエリアも握り返した。

「嫌じゃ、ない…」

「よかった…。じゃあ最後。目を閉じて…?」

「……これで、いいのか?」

「うん。OKだよ…。」

「――っ!」

じっと待っていたら突然の唇に感情が。
その唇はちゅっ、と音を軽く立ててすぐに離れていく。

「じゃあ、キスはどうだった…?」

意地悪な笑みを浮かべながらアレルヤは繋いでいた手を離した。

「嫌じゃ、なかった…」

ティエリアは解放された手で唇に触れ、目を逸らすようにうつむく。

「そっか…。じゃあ僕の事、好き?」

「好き…、なのかも知れない。」

俯くティエリアがチラッと盗み見たアレルヤの顔は満面の笑みだった。




†絡めた指が愛になる
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