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□デジャヴ
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ここは…、確か舞踏会。
気が付くと、周りではきらびやかな衣装を着た男女がワルツを踊っている。
思えば自分も華やかなドレスを身に纏っている。
そう、俺の結婚相手を探す為にこの会をミス・スメラギが開いたのだった。
まったく…。
俺にはそんなもの必要ないと言っているのに。

そんなことを思っていると、前方から金髪・碧眼の男が鼻息荒くこちらに来た。
そして俺の前でひざまつき
「眠り姫、踊りませんか…?」
そう言って俺の手を待つような感じで上に向けられた手を振り払ってやった。
「俺は眠ってもいないし姫でもない!」
踵を返してこの無礼者から遠ざかろうとした時、長身の男にぶつかった。
慣れないヒールによろめいた。
男は何も言わず、俺の身体を受け止めた。
そのまますぐに立ち直し「すまない」とひとこと言っておく。

「いや、大丈、夫…。‥‥‥なんだ、ティエリアか。綺麗だね、その格好」
俺を受け止めたのはアレルヤだった。

そうやって君はいつも皆に笑いかける。
いつもは俺にばかり構ってくるくせに…。
「そうだ、せっかくティエリアがおめかししてるんだったら一曲踊ってご一緒しませんか?」

さっきの変態男がやったみたいに、ひざまつき右手を掲げる。
「…なんちゃって」
だが、さっきのような不快感はなかった。
そして無意識のうちにその手を取っていた。
俺の手を引き寄せアレルヤは笑みを含みながらエンゲージリングをはめる指にキスをした。

ティエリアが目が覚めると、彼のプライベートルームだった。

(変な夢を見た‥‥‥)
そう思って眠気を飛ばそうと、紅茶を飲もうと食堂に向かおうとした。
そこに丁度通りがかったアレルヤが声をかけてきた。

「あ、ティエリア。ちょうど良かった。君にこれを渡したかったんだ。」

そう言ってポケットから出したのはリングだった。
それをアレルヤは右手に持ち、ティエリアの左手・薬指にはめる。
あっけに取られているティエリアを余所に、アレルヤは指輪をはめてあげた手を持ち上げて、リングにキスをした。

どこかで同じ事を体験したような、不思議な浮遊感に襲われたティエリアはすかさず一言。

「万死に値するッ!!」
ティエリアはそう言い放ち、そのままアレルヤの脇を通り食堂に直行する。

だが、ティエリアはその指輪を棄てる事はなかった。




†薬指にくちづけを
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