main

□忘れ物
1ページ/2ページ


アレルヤはティエリアのプライベートルームの前で立っていた。
手には前にティエリアが先日、食堂に忘れていった本。
今日はそれを返しに来たのだ。

「ティエリア、入っていいかな?」

「…なんの用だ?」

返ってきたのはいつもの素っ気無い声。
どうやら怒りは収まっっていたようだ。
怒鳴られるかと思い、ドキドキしていたアレルヤだったが、この声を聞いて少し落ち着いた。

「この間、君が本を忘れてたから返しに来たんだけど…」

「それは、…迷惑をかけてすまない。」

そこまで言うと、目の前にあるドアが開き、ティエリアが現われた。

「どこを探しても、見つからない…わけだ」
今日のティエリアはいつもと違い、アレルヤではないどこかを見て話している。

「これ、君が忘れていった本。はい」

アレルヤがティエリアの前に提示すると、ティエリアはぶん、とその本を取り上げるように受け取った。

「…すまない。」

そう一言だけ告げた。すると、アレルヤの手が伸びてきて、ティエリアを自分の目線に合わせるように顎に添え上に向かせ
「そういう時は、“すまない”じゃなくて“ありがとう”って言うんだよ。」

ポカンとして半開きの唇に親指でなぞって笑うアレルヤ。
ハッとなってティエリアはその手を振り払い
「…あ、ありがとう」
素っ気なく言うと、アレルヤは満面の笑みを浮かべて
「どういたしまして。…それじゃあ、僕は部屋に帰るね」
と言って去っていった。

ティエリアは唇に触れた温もりを一人、かみ締めていた。






†唇に指を這わせ
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ