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□teacup
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今、プトレマイオスの食堂にはティエリア・アーデしか居ない。
隅のほうで、読書をしながら静かに紅茶を飲んでいる。
ティエリアの至福のひとときである。

しかし、そのひとときを邪魔する者が現われた。
ティーカップを傾けると同時に自動ドアが開いた。
ドアの向こうから現われたのは、同じく、ガンダムマイスターのアレルヤ・ハプティズムだった。

彼だと認識すると、ティエリアは再び読書に励もうとしたが、それは実行されなかった。
アレルヤが合席をしてきたからである。

「…他にも席は空いていると思うのだが?」
ティエリアが目もくれず、言葉を投げかける。
「うん。でも一人だとやっぱり寂しいから」
朗らかな笑顔でそれに応えるアレルヤ。
その笑顔に苛立ちを覚えるティエリア。
少しでも苛立ちを押さえる為、ティーカップにある紅茶を少し口に含める。

「へぇ、それって何ティー?」

興味津々のアレルヤに気付かれないように、ため息を一つだけ漏らし、「アールグレイだ。」と短く答えた。

「アールグレイが好きなの?」
「…まあまあだ。」

どんどん自分の声が凍っていっているのが分かる程、ティエリアは苛立ちがピークに達していた。

「一口だけ、ちょうだい?」
「…。」

一人、アレルヤを無視しようと決め込んだティエリアは無言でティーカップを差し出した。

「ありがと」
そう言って、アレルヤはティエリアの悶々とした苛立ちを気付かずにティーカップに口をつける。
そして、そのティーカップをティエリアに渡す。

「うん。美味しいね」
何を言っているんだ、と思い顔を上げると手にはカップ以外の感触が。
指にアレルヤの手が触れたのだ。
びっくりして、ティエリアは手を放すと、アレルヤは首をかしげた。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない…」
今度は手に触れないようにティエリアはティーカップを受け取り、頭の中を巡るいろいろなものを癒す為、再びカップに口をつけた。


「そういえば、これって間接キスになるのかな?」
「っ!?」
突拍子もない言葉にむせるティエリア。
けほけほ、と息苦しそうにしているティエリアにアレルヤはすぐに立ち上がり、背中を擦る。

「だっ、大丈夫?」
心配そうにするアレルヤに対し、ティエリアは
「ば、万死に値するっ!」
と涙目で言い放ち、そのままアレルヤの手を振り払い、スタスタと自室に戻っていった。


「ティエリア!…本を、忘れてるよ?」
アレルヤの親切な言葉は、誰も聞いていなかった。




†指先でそっと
.
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