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□Frist meet
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― Mario ver. ―

現在、8時半。
彼――マリオ・マリオは悩んでいた。

約束の時間は10時。
間に合うにはもうすぐ出発しなければならない……。
「考える人」となった彼の横には、
すうすうと寝息を立てる弟――ルイージ・マリオがいた。




「遅刻だあ、遅刻ー!」
2階から聞こえてくるその大声に小さくため息を落とした。
彼を憂鬱にしているのは、けっして遅刻ではない。
髪だ。髪なのだ。(彼をもってすれば移動時間などいくらでも短縮できるのだ)
いつもはワックスで綺麗にまとめられている髪は、
ボサボサだ。ボサボサボサだ。
「こうなったらあの手を使うしかないな……」
できれば使いたくない手だが、背に腹は変えられない……いや、髪にリスクは変えられない。
ボトルから液体を落とすと、手を動かす。
その速さはもはや神速、彼は鬼神と化していた。
そのボトルには、大きな字で「超強力接着剤」と書かれていた。




カチンコチンに固まった髪、少し汗の浮いた額。
それらから普段の彼の面影は読み取れない。
けれども、それは仕方の無いことだ。
彼らと“白無”(びゃくむ)が接触すると、能力の無効化が発生する。
彼が上手くいかなくなるのも、当然だ。

己が一番、待ち望んでいる“初者”(はっしゃ)はいつ、来るのだろうか。
“万物”を持つ彼は、いったいどのような世界を作りあげるのだろうか。
その、純白の翼を持つ彼は。
微笑を、浮かべた。

世界、開幕―――――。




…first meet.
 彼は、万物の才を持ち…
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