恋人はスナイパー


□群青
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春は心地よい風とたくさんの草花
風がなめらかにそよぎ、母さんと歩いたその場所は特別な記憶として、今もこの胸にある

夏は早く目が覚める
流れる汗と照り返しに目を細めた
いつもアヴェ・マリアが聞こえる
夜の街の煌めきが慰めてくれているような錯覚に、僕は深呼吸する

秋は長い夏の名残のよう
月餅の甘さと土の匂いを思い出す
そして家族のいない今を思い知る
月の満ち欠けのように、もしも寂しさを忘れられても、恋しさは消えないだろう

冬は無になるがなりきれない
寒さに疼く傷痕…
被弾した古傷が、過去を脳裏に思い出させる
罪と痛みが体に…そして苦しみはオモリになって胸に
蒸籠の湯気に、冷え切った感情が和らいでくるようだ
胸のオモリが僕の罪の重さ…沢山の命を奪った痛み

なのにどうして?
君に会いたい
君に話したい
君を見つめたい
君を忘れたい
…君といたい

僕はずっと失っていたものを
欲していたものを、取り戻せたのかな?
これだけは確かだ
君の前では僕でいられた


殺すのも、愛するのも、痛い



 

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