Short story
□"美"の秘訣
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ソロリ・・・ソロリ・・・。
愛野美奈子は今、最大級の緊張の中にいた。
見つからないよ〜うに。見つからないよ〜に・・・。
忍び足で電柱の後ろに隠れたり木に隠れたり。
通り過ぎていく人達がいぶかし気に見ていくが、美奈子は全く気が付かなかった。
ターゲットは、前方15メートル先!
一挙一動見逃さないわよ〜!
美奈子の目は未だかつてない程燃えていた。
そんな熱い視線の先にいるのは・・・、エメラルドグリーンの波打つ髪が印象的な海王みちる。
行き交う人々が男女問わず、みちるを振り返って視線を送る。
これよ〜!これなのよ〜!
どうすれば、ああなれるのか!
誰もが振り返る美少女に!
愛野美奈子!みちるさんを研究しま〜す!
「やっほ〜♪みっな〜こちゃ〜ん!」
電信柱の影に隠れる美奈子に後ろから突然、うさぎが飛び付いた。
ゴンッ!!
(い"だい"〜!)
電信柱にしこたまオデコをぶつけてしまった美奈子は、声を殺しながらも痛みに必死で耐えながら、うさぎに振り返る。
(う〜さ〜ぎ〜ちゃ〜ん!)
「あはは。ごめんごめん。で、なにしてるの?」
美奈子は涙目になりながらも前方を指差し、
(シー!あれよあれ!
みちるさんを尾行中なの!)
うさぎは前方にみちるを見つけ嬉しそうに、
「あ!ほんと〜だ!みち・・・!!」
手をふりながら声を掛けようとするうさぎに、美奈子は必死にうさぎの口を両手でふさいだ。
(うさぎちゃんのバカ〜!ばれちゃうじゃないの!今、秘密の任務中なんだから!)
(ほ〜ゆうほこ〜?)
注:「ど〜いうこと?」
(だから〜、今みちるさんの魅力について研究中なの!そしたら、美奈子もモッテモテの美奈子様に変身よ!!)
(あ〜なるほど。
んじゃあ頑張ってね〜。)
うさぎはアッサリと踵をかえしその場を去ろうとする。
(待った〜!うさぎちゃん!ここであったのも縁よ!一緒に尾行するのよ!)
(え〜!だって今からまもちゃんと〜!)
(い〜からい〜から!友情も大事よ〜!一緒に研究したらうさぎちゃんもレベルアップ!衛さんも喜ぶわよ!)
(・・・・え〜そうかな?)
(そうよ!さあ!いきましょう!)
美奈子はまだ迷っているうさぎを捕まえたまま、大分先に進んでしまったみちるを大股で追い掛けた。