Short story

□Hand(SIDE.MICHIRU)
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はるかの手は、女の子にしては大きい。とても形の良い、綺麗な指をしている。
みちるは、少し前を歩くはるかの手を見ていた。

この手に触れたら、貴方はなんと言うかしら?

後、5pで届きそう・・・。
「みちる?どうしたの?」
黙ってしまっていた私に、はるかは心配そうに聞いてきた。
いつも私の様子に直ぐに気が付いて気遣ってくれるのね。
「なんでもないの。急ぎましょう。もうすぐ開演時間でしょう?」
二人で映画だなんて。なんだかデートみたい。
貴女が提案してくれた。闘いに明け暮れずに、たまには普通の人のように過ごそうと。
そんな貴女の気持ちが嬉しくて、私は直ぐに了解した。頬が赤くなったのを気付かれたかしら・・・。待ち合わせもなんだか恥ずかしかった・・・。待ち合わせ場所に行くまでの間、普通の顔して貴女と話が出来るかや、服や髪型はおかしくないかとか、もう気が気じゃなかったわ。先に来ていた貴女を見た時、心臓が止まりそうだった。近くにいた女の子達が、噂しているのが聞こえたわ。「あの人とってもカッコいいね」って。私も同じ気持ち・・・。貴女とこうして休日を過ごせるなんて・・・。   「お待たせしてごめんなさい。」         私達・・・、人からどんな風に見えるのかしら・・・。ふと、ショーウィンドウに目がいく。ショーウィンドウのガラスに写る私と貴女・・・。
ガラスに写る私と貴女の手は、まるで重なりあっているように見える。

(まぁ・・・。)

しばらく幸せに浸っていると、突然手首をガシッとつかまれた。
(えっ?)
「急ぐよ!みちる。」

はるかが急に私の手を掴み走り出したのだ。
わたしは必死についていく。
いつの間にか、手首から手に移動したはるかの手はとても温かい。私の鼓動が手から伝わってしまいそうで、余計に鼓動が早くなる。このままどこまでも一緒に行きたい。

そんな私の願いも虚しく、あっと言う間に映画館に着いてしまった。
流石は飛翔の戦士だ・・・・。

はるかの手がもう離れてしまうのかと思うと、残念で仕方がない。私の心はあっと言う間にしぼんでしまう。
だが、はるかは一向に私の手を離さなかった・・・。
チケットも既に用意されていた様で、財布を出す手間もなかったようだ。そして結局、手を離してくれたのは映画が終わった後だった。

私は混乱していた。

時々、はるかの表情を見ようと試みるが、恥ずかしくて結局見れない。
何故離さなかったのだろう・・・。
はるかと別れた後も、疑問符が頭の中を支配していた。
どれだけ考えても答えなど分かるわけがない。
本人にも聞けるわけがないし・・・。結局、モヤモヤしたまま、次の日の朝を向かえてしまった。

マンションの下にはいつもの様にはるかが、バイクにまたがり、みちるが来るのを待っていた。
いつものように、サッと手をあげ「おはよう。みちる。」と言う。

いつもと全く変わらない態度・・・。
なんだか私は、いつもと変わらなさすぎる、はるかの態度に、ものすごくガッカリした。
もしかして・・・、なんて少し思ったのに・・・。ばかな私。
密かに苦笑いし、いつものように向き合った。
「おはよう。はるか。」
そして、いつものように後部シートに座り、はるかに渡されたヘルメットをかぶった。
今は表情が隠れてくれて有難い。
そういえばはるかはプレイボーイを装っている。
昨日のアレは、はるかにとっては大したことではなかったのかもしれない。
そうか・・・。
私がガッカリしていると、バイクを出そうしていたはるかが、こちらに振り向いた。

「みちる。今日の放課後空いてるかい?」     「え?空いてるわ。」   「良かった。是非、一緒に行きたい所があるんだ。海のそばにあるレストランでね。僕の車でドライブしながら行かないか?」  急なはるかの申し出に私は舞い上がった。はるかとドライブするのは、私の夢だったから・・・。私が断るわけがない・・・。どうしよう・・・。すごく嬉しい。
叶えてくれるの・・・?はるか・・・。
私は先程とはうって変わって、幸せな気持ちに包まれながら、はるかの背中に分からないように頬寄せた。

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