Long story
□出会い・第三章・
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それから数日後、約束通りみちるはサーキット場に来ていた。
鳴り響くエンジン音と、目が回りそうなスピードでコースを走るレーシングカーに、圧倒されていた。
全てが初めての体験だった。
ここにあの子がいるの?
「やあ、待たせて済まなかったね。
みちるちゃん、すごい音だろう。ビックリしたかい?」
「えぇ。驚きました。
それにすごいスピード・・・。本当に人が運転しているんですか?
怖くないのかしら・・・。」
「ははは。そうだね〜。
でも、怖いより気持ち良いって思ってるかもしれないよ。」
「あの・・・、研修生の方々はどちらに?」
「ははは。早速だね。
実はここにはいないんだよ。
ここに隣接するスタジアムで皆、トレーニングを積んでいるよ。
はるかは、モトクロスのチームにいるんだ。」
「モトクロス?」
「百聞は一見にしかずさ!さあ行こう。」
「はい!」
本田の用意してくれた車にみちるは乗り込んだ。
数分後、車は巨大なドームの前に停まった。
車を降りて、その広大なスタジアムを見上げる。
やっと会えるのね・・・。
みちるは心臓がドキドキしているのを感じながら、ドームの中に入っていった。
暫く進んで行くと、賑やかな声が聞こえてきた。そして、先程のレーシングカーとはまた違ったエンジン音・・・。
何の音かしら?
そう思ったところで、長い通路は終わり、ようやく広々とした練習場に出た。
みちるがキョロキョロしていると、本田がみちるを誘導してくれた。
連れられて着いた場所の目前には、デコボコした道や土を高く積んで作られたいくつもの、山々。そして坂道。そこには何台ものバイクが行き交っていた。
「あれがモトクロスだよ。」
本田の声にみちるは目を見開く。
この中にいるのね・・・。
みちるは両手を口元に組み合わせ、祈るようにはるかの姿を探した。
その時、みちるから一番近い丘陵から勢い良く一台のバイクが力強く飛び上がった。
エンジン音が激しくなったかと思った次の瞬間には、音が消え去り、宙に浮くバイクはまるで空を飛ぶ鳥のようだった。
時間にして僅か数秒間だった筈だが、みちるには一瞬、時が止まったように感じた。
すごいわ。
バイクをあんな風に操るなんて・・・。
「今のみたかい?
すごい滞空時間だよ。」
「空を飛んでるみたいでした・・・。」
先程の空を舞ったバイクは,コースをやりきった後,大きく円を描きブレーキをかけて停まった。
そして,ドライバーはヘルメットに手をかけると,勢い良く外した。
あっ!
みちるは息を飲んだ。