Long story

□悪夢(SIDE.HARUKA)
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最近同じ夢を見る。

何度も何度も繰り返す夢。
まとわりつく暗闇に、僕は必死に
抵抗し逃れようともがく。

助けを求める声は、暗闇に吸い込
まれるだけだった。

恐怖で立っていられなくなる。


ここはどこなんだ・・・!



誰か・・・!!



突然辺りは明るくなった。




「おい!天王!」





呼ばれて立ったまま夢を
見ていた事に気が付く。



これは重症だ・・・。



「どうしたんだ?なんか今
変だったぞ?最近おかしいぞ?
何かあったのか?」



ここは僕の仕事場。

サーキット場だ。

僕は僕を心配してのぞき込む仲間
に「大丈夫だ」といい、それでも納
得いかない顔の彼に、精一杯笑っ
てみせた。

失敗したと僕は思ったが、彼は「い
つでも相談しろよ」と言い自分の
持ち場に戻って行った。

何故同じ夢ばかり見るの
か・・・。

何度見たか分からなく成る程繰り
返しみた。
夢の中は、「お先真っ暗」という
言葉がピッタリきそうな重苦しい
空気が流れていた。

目が覚めると大量の汗と、頭痛。

なんなんだ・・・。何か意味でも
あるのか・・・?       
こんな不気味な夢に意味があるな
んて思いたくない。
しかし、僕には予感があった。
それも、物心つくずっと以前か
ら。
自分には何かある。

人とは違う何かが。

考えようとすると、頭の中でシグ
ナルがなる!  治まりかけていた
頭痛が、また激しくなる。



僕は立っているのも辛い身体をな
んとか支えながら、ロッカールー
ムに入った。すぐに椅子に腰掛け
る。



「はあ・・・。」



全身の力が抜ける。



闇の夢を見出してからというも
の、絶望・死という文字が頭によ
ぎるようになった。
それまで感じた事などなかった感
情だ。

モトクロスや車の運転で、どれだ
けスピードを出しても死を感じる
事はない。
風を感じていると、本来の自分の
いるべき場所に還ってきたような
気分になる。だからどれ程スピ-ド
をだせども恐ろしくは無いの
だ。





僕は重い身体をなんとか動かし、
ライダースーツを脱ぎ捨てた。

もうこれ以上は練習になりそうに
ない。

こんな事が続けばレースに影響す
る。

苛立つ気持ちをなんとか沈める
為、コーヒーでも飲みに行く事に
した。
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