焔緋×白銀

□【欲望の哲学】
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愛さなくたっていい。優しくしてくれなくたっていい。
誰にも呼べない声で私の名前を呼んでくれるだけで。それだけでいい。
(彼の声は まるで媚薬のように私の理性と思考を蕩けさせる)
身体の芯に響くような甘さを孕んだ 彼の低い声が好きだな。と思った。

私は思う。熱に浮かされた思考で ひたすら。
何故なら行為に没頭してしまったら最後だと思っていたから。
私は彼に常々問い掛けたかった。
これは愛なのでしょうか?恋なのでしょうか?
(だって私達 互いに殺し合う関係ではないですか?)
おかしい。おかしい?もう解らなくなってしまう。何が正しいのかさえ。
そして私が愛して守るべき相手は誰なのかさえも。わからない。

「…っあ ぅ…」
もう立ってられない。
あの生々しい。酷く厭らしい赤い色彩をもった舌が私を捕えて絡む。
強すぎる 熱の中心への刺激は 私の腰に直接響いて脳髄に痺れをもたらす。
「…あ…そんな とこ…っ…」
ゆっくりと麻痺していく 左脳。思考力の低下。
私は縋るように彼の腕へ しなだれかかる。それを受け止められる。
背中を殊更強く背後の壁へと押しつけられた瞬間 脚を抱えあげられて。
あ…入る…と思うよりも先に内臓への圧迫感と背骨に響いた鋭く甘い刺激に 反らした喉から声が漏れた。
自分でも信じられないくらいの濡れた声。それは悦びに相違なかった。
揺さぶられるたびに繋がった部分が服の裾からチラチラと見え隠れするのを眺めながら“気持ち悪…”と思った。
(そして大切な人々を裏切って こんな風になってる自分に一番吐き気がする)



『あぁ…このままブッ殺してくれやしないか…?』
喉元まで出掛かった言葉は形にならず ただ意味の無い淫猥な音が唇から零れるだけ。


















の定義。

欲望の無い恋は恋じゃない。行為を伴わない愛は愛じゃない。
それではこれは恋でしょうか?愛でしょうか?













 
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