破壊天使×天使長

□【痛々しいlove】
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A.

夏の終わり アスファルト。
そこに咲く白い花(いっそ焦げ付くくらい 穢れを拒絶する程の潔い白さ)
ジリジリと太陽が照り付ける最中でも色を失わない。
私は その強さとひたむきさに いっそ感動を通り越して嫉妬すら覚える。
そして頭の隅っこで『彼に似てるなぁ…』と思って愛しくなる。



人間界−東京−
その場の空気は天界では考えられないくらいに汚染されている(ような錯覚)
人造の冷気を得るために必要以上の熱を吐き出す無機物。
(おかしいね?パラドックスは感じないの?)
私には人間の考えることは到底 解らないけれど。
「暑いねぇ…」
「ですね」
「なんだっけ?氷の上に甘いのがかけてあるやつ」
「……かき氷?」
「 食べたい 」
そう言うと彼は常々携えている無表情に『仕方ないなぁ…』という色を少しだけ浮かべた。
(でも そんなクダラナイ私の我儘をきいてくれるのが とっても上手で好き)
そんで 私達は2人で公園を散歩しながら 赤色の(甘い)かき氷を食べる。
熱の籠った身体に ひんやりと冷たい氷と。クドいくらいに甘い赤いシロップが心地いい。
口の中に含むと途端に溶けて 喉を抵抗なく流れて落ちる。そこから じわり… と熱を奪われていくような そんな感覚。
(例えるなら私の体内が なんだか内側から浸食されていく…感じ)
そこまで考えて 私は僅かに眉を寄せた。いけない。こんなことばかり考えてしまうのは きっと熱にあてられたからだ。
太陽のジリジリとした熱気が逃げ場所すら失くして 私の内側に籠っていくような錯覚すら覚えてしまう。それはまるで遅行性の毒薬に緩慢に侵されていく感覚にも似て。

「 ミカエル様 髪が… 」
いつも通りの声で私の名前を呼んだ後 彼は冷たい指先で私の頬を撫でるような仕草で触れる。それだけで私は思考が麻痺していく。
(あぁ…左脳が痺れる…)
思考力も言語力も一切が停止 そして静止。
ズルイ…よ。そんなのってない。いつもいつも君は こうやって私を雁字搦めにして離してくれないのだ。
“飛べなくなってしまうじゃないか”なんて不満は建前で。私は いつか彼に閉じ込められて囚われることを望んでいる。
(私が堕ちたら彼は私を掬いあげてくれたり するのだろうか…)
そんな気持ちは彼に届く前に きっと地面に落下して。私の言葉なんて這いつくばった蛇にも ちっぽけな蟻にも伝わらない。そして気付かれないままに汚れた靴で踏みにじられるのだろう。

「“このまま2人で何気なく暮らさないか”」
「 は? 」
「イエス様とブッダ様はいいねぇ?」
先日の出来事で歌われた言葉の一節を思い出す。それは互いを慈しみ合う二人の物語。
私はそれが愛だなぁ…恋だなぁ と思ったし“いつか実際にそうなれば素敵”だとも思った。
(だけれど そんなこと決して叶わないということも知っている)
『イエス様とブッダ様みたいに 私達もシェアしちゃったりしない?』なんてね。冗談。そんなこと言わないし 言えるわけないもの。(だけど…本気)

そして私は少しだけ困ったように微笑んで 冷たい赤さに犯された舌先で 彼にキスをおねだりする。




運命の糸と罪の林檎は どうして同じ色なのかしら?




交錯しない思考。彼は こんなにも私から遠い。
雪が溶けていくように。染み込むように。
この気持ちも伝わればイイな。貴方の心に触れたらイイな。
(貴方の小指も薬指も。心でさえも触れさせて 私だけに)












 
 
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