DUST

□【Dive to Blue】
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その愛情は狂気を孕んでいる。
(それは常々 巧みに隠蔽されている)

















「私 生き方を忘れてしまいました」



唐突にそんなことをホザきやがる相手に 俺は開いた口が塞がらない。
“何言ってんだコイツ…バカか…?”
ポカンとしてしまった俺に対して壮絶な程の美しい笑みを傾ける。
「おや 可愛い」なんて 言葉が飛び出してきたのを切欠に俺は口を閉じて眉をしかめた。
(違った バカじゃなくって変態デシタ…)
コイツの言葉や行動は常識を知らない。或いは元から存在しないのかもしれない。
だけれど綾達には紳士に振る舞うので一概には言えないのだけれど。
奴は そんな事を考える俺の思考を見透かしたように告げる。


「こんなクダラナイ…だけれど とっても大切なコト。
 言えるのは君にだけ…昶君しかいないんですよ?」


不覚にも俺は悪態をつくのも忘れて言葉を詰まらせる。
奴は そんな俺を腕に抱き寄せて。
体温の無い 冷たい唇で優しいキスを落とす。
(皮膚の内側にまで入り込むような錯覚)







 
「君がいないと呼吸すらも出来ない。
 魚が生きるために水が必要なように。
 私は もう 独りでいた時に出来ていたコト全て忘れてしまいました…」
“君がいないと 私 何も出来ません!”なんてフザケたコトをぬけぬけと。



「そんじゃあ お前をブッ殺したい時は俺はただテメェの前から姿を消せばイイ訳だ?」
「嘘ばっかり。私のコト殺せないクセに」
「勝手に思ってろ バカ」



「そうですねぇ…でも その時は」















「先に私が君を殺します」










穏やかな静寂を醸す蒼い瞳が狂気を孕む。
(違う。それは既に もうとっくに存在していたものだ)
コイツは頭がオカシイ。
気狂いだ。
思考回路がイカレてしまっている。
だから仕方無いのだ。
なので俺も その時が来たらコイツの言う通りに殺されるしかないのだと思う。
(出来るだけ…痛くしないでくれると有り難いのだけれど)





(そう思う俺も気が違えているのかも解らない)
















俺を生かすのも殺すのも。
全ての理由がコイツであったならば こんな幸せって無いのに。




 









Fall in sky.
(空に溺れる魚)

貴方がいないと 当たり前のことすら出来やしない。
(そして俺は蒼い色彩に溺死する)













 

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