DUST

□【ホルマリンの腐海】
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揮発したホルマリンに 緩やかに溶かされる思考と脳。
(とろり…と粘液に浸かるみたいに浮遊する感覚)
そして知らないうちに 絡め取られて身動きが出来ない。




ホルマリンの腐海








『貴方が死んだら その眼と心臓を貰ってあげましょうね』
なんて綺麗な笑顔で。
残酷な台詞を易々と吐き出すのだろうか。



「其方が先に死んだら どうするつもりだ」

「…バカな子。私が焔緋より先に死ぬなんて有り得ない」
“でも…まぁ その時は
 貴方も私の好きなトコを取っていけば いかがでしょう?”

口端を歪めて笑う。
綺麗に笑う。
(でもどこか酷く淫靡で残酷だ)
其方は他人を自分に浸らせて 絡めとって離さない。
美しいが故に 少しゾ…っとするところがある。


 


片目が澄んだ蒼色で。
逆が翡翠のオッドアイ。
“人形みたいに綺麗なのだろうか…”と思いを馳せても。
それを見られるようになった時 余は もう死んでいるので不可能だ。




「…あぁ それは残念だ…」

その様を想像して 僅かに熱の籠もった溜め息を吐き出した。
惜しむらくは。
我が眼が嵌り込んだ相手を見れないことと。
そして きっと誰にも知られず泣くであろう 其方の肩を抱き寄せてやれないことだろうか。

けれども。
いつか その瞬間が来ることを密やかに待ち望んでいる。















「私ね 貴方の澄んだ翡翠色の瞳 好きですよ」



「余は其方の瞳だけと言わぬのだがな…」











強く他人に求められる優越感に 多少の犠牲は厭わない。
狂気めいた その思考の凶暴さ。











【ホルマリンの腐海】

(綺麗な人!
出来るならば君の全てを手に入れたいのだがね!)










 

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