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□お節介焼き
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今日も今日とて、小松田さんはやってくれる。
私の仕事を手伝うと言ってきかない小松田さんに、それならと簡単な仕事を頼んだにも関わらず、書類に墨を零して読めなくするというミスをやってのけた。

「小松田さん、いい加減にしてください」
「ごめんねぇ沙耶ちゃん」
「謝るくらいなら最初からミスしないでくださいよ」
「うん、ごめんねぇ」

困ったようにへにゃりと眉尻を下げ、申し訳なさそうに謝る小松田さんだが、過去に彼のしでかしたミスは計り知れない。


「……仕事を手伝うとか、新米の私を気を使ってるのか知りませんけど、貴方が手を出すとむしろ仕事が増えるんです。迷惑なんです」

忍術学園に来てから半年。
わずか半年、されど半年。半年間溜め込んで蓋をしていた気持ちは、隠してはいたが無くしていたわけではなかった。

「貴方が仕事を増やすと、他の先生方の仕事にも影響が出るんです。その先生方に謝りに行くのは私なんですよ。……わかってください、疲れるんです」

言ってやった。そう思うのと同時に罪悪感が生まれる。
原因は目の前の小松田さんである。耳を伏せ、尻尾を垂らした小動物のようにしゅんと落ち込む姿に私の良心が痛む。

「でも、ボクは沙耶ちゃんと一緒に仕事がしたかったんだぁ」
「……、え」
「ごめんねぇ。初めての後輩だから先輩ぶってみたけど、迷惑かけちゃったね。ボクって駄目だなぁ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………ああもう!」

小松田さんはずるい。
何がずるいって、そういうのを無自覚にやっちゃうところだ。そういうのは本来、女の子がするべきで、小松田さんは、…………もう、だから小松田さんはずるいんだ。

「……小松田さん」
「んん、なぁに?」
「仕事は手伝わなくていいので、話し相手になってください」
「話し相手?」
「その、職場の人間関係の相談とか。先輩にしかできない話もあるので」
「うん!ボクでよければ!」
「って、あああ!もう書類踏んで、ああああああそこには墨が!」



お節介焼き





お仕事はできるけど、人付き合いが苦手な後輩を気にかけて世話を焼こうとするけど、失敗して迷惑かけちゃう先輩。に絆されて徐々に心開いていく後輩。
20130228

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