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□蒼い月、紅い炎。
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町は、炎に包まれ、逃げ惑う者たちの悲鳴が聞こえる。

炎は、夜を切り裂き辺りを紅く染める。


その炎の中に、二本の刀を持った女が立っていた。

彼女は、鮮やかな赤く長い髪をかきあげて、燃え盛る町を、見つめていた。

……否、炎と逃げ惑う者たちを見つめていた。
まるで、それに引き込まれているかのように。


彼女は、しばらくそれを眺めた後に踵を返し、燃える町を後にした。
……自分の行く手を阻む者たちを、切り裂きながら。

町外れにたどり着いたときには、白い足や衣服などは他人の血で染まっていた。


彼女が町を後にして、ふと意識を後ろの町から前方に移したとき、一人の男が立っているのに気付いた。

「……水貴」

自分の名前を呼ばれ、彼女は愛刀に手を掛けた。

しかし、男は持っている刀を構える事なく、じっと水貴を見つめている。

「…何の用だい?私は炎の一族に用は無いよ」

水貴にはわかっていた。

この男が、自分と敵対する『火の一族』と、呼ばれる種族だということを。
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